公募研究
特定領域研究
植物ホルモン・オーキシンは種々の組織で方向性をもって輸送され、局所的に蓄積し、器官形成や偏差生長などの種々の応答を引き起こす。PINファミリーのオーキシン排出タンパク質は種々の細胞の細胞膜上で非対称に局在し、その非対称局在が組織内のオーキシン輸送の方向性を規定すると考えられている。PIN蛋白質の非対称局在にはエンドサイトーシスとリサイクリングが関与すると考えられており、それらの輸送経路に関わる因子も明らかになりつつある。しかしながら、細胞内輸送経路の詳細や、非対称局在のメカニズムは十分に理解されていない。PIN蛋白質の細胞内輸送に関わる因子を同定するために、私たちはエキソサイトーシス阻害剤存在下でもPIN1蛋白質が細胞内の膜系に蓄積しにくい変異体を探索し、得られた変異体をben変異体と名付け、解析を進めてきた。これまでにBEN1遺伝子はARF GEF相同タンパク質をコードし、BEN2遺伝子はSec1-Munc18ファミリータンパク質をコードすることを明らかにした。本年度はBEMとBEN2の発生における機能をさらに詳細に解析し、BEN1とBEN2は胚発生や側根形成などにおいて、PIN蛋白質の非対称局在とオーキシンの局所的蓄積に関与することを明らかにした。また、PIN蛋白質を細胞内に過剰に蓄積する傾向があるbex1変異体の解析から、BEX1の機能を強く阻害すると発生の進行が阻害されることを示唆する結果を得た。これらの結果から、BEN1、BEN2、BEX1などの因子が関わる膜輸送系は、オーキシン依存的な種々の発生制御に重要であると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
PINタンパク質の輸送に異常を示すben変異体について、発生異常の詳細な解析を行い、BEN遺伝子が種々の発生過程でPINタンパク質の非対称局在とオーキシンの局所的蓄積に関わることを明らかにできたため。
BFAの存在下でPINタンパク質を細胞内の膜系に過剰に蓄積するbex変異体の解析をさらに進めることにより、BEXタンパク質の作用機作と、非対称局在における役割が明らかになると期待される。また、PINタンパク質以外にも、植物細胞の細胞膜において非対称に局在するタンパク質が知られている。今後、BENやBEXがPIN以外のタンパク質の非対称局在に関与するかについても解析を進める予定である。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)
The Plant Cell
巻: 24 号: 7 ページ: 3074-3086
10.1105/tpc.112.098152
Developmental Cell
巻: 21 号: 4 ページ: 796-804
10.1016/j.devcel.2011.08.014