研究概要 |
ゲノム刷り込み現象は,哺乳類特有の親由来特異的遺伝子発現を引き起こすエピジェネティックな現象であり,生殖細胞系列で親由来特異的メチル化インプリントの消去と確立を世代ごとに繰り返す。しかし,メチル化酵素Dnmt3a,Dnmt3Lによってどのようにメチル化すべきdifferentially methylated region(DMR)が特異的に認識されるのかなど,そのメチル化インプリントの確立機構は不明な点が多い。最近,Snrpn,Gnas遺伝子領域における母性メチル化インプリントの確立にDMR近傍の転写が重要であると報告されたが,なぜ転写がDMRにおけるメチル化を誘導するのかは明らかにされていない。しかしながら,DMRの何らかのクロマチン構造の変化や核内配置の変化が先の転写の誘導やメチル化酵素の領域特異的な認識機構に関与している可能性は極めて高い。 そこで,本研究課題ではメチル化インプリント確立時期に特異的なクロマチン構造や核内配置の変化を明らかにするため,出生後のマウスより,成長卵を回収し,サイズ別にPWS-IC領域とPeg1/Mest領域の核内配置をDNA-FISH法にて解析した。また,各々のサイズにおけるメチル化状態をBisulfite Sequencing法で明らかにした。その結果,これまでの報告と一致して40~60μmの大きさの成長卵においてPWS-IC領域はメチル化を受けるのに対し,Peg1/Mest領域は60μm以上の大きさになってはじめてメチル化を受けることが分かった。さらに,各々のメチル化を受ける時期のゲノムの核内配置をDNA-FISH法で解析したところ,40~60μmの大きさの成長卵において,PWS-IC領域が核膜近傍に位置する傾向が見受けられた。今後,さらに詳細な核内配置を明らかにする事で,母性メチル化インプリントの確立メカニズムを明らかにする。
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