公募研究
特定領域研究
本研究では、ショウジョウバエをモデルにして減数分裂遺伝子の発現制御ならびに精子核の凝縮に必要なエピゲノム制御因子の同定とそれを中心とする制御ネットワークを明らかにする。また新規RNA結合タンパク質ファミリーがショウジョウバエの生殖系列細胞でのエピゲノム制御に必要との結果を得たので、その標的遺伝子群の同定と発現抑制機構を解明することを目的とする。1.ヒストンメチル化酵素と相互作用するエピジェネティック制御因子の遺伝学的同定:ヒストンメチル化酵素G9aをショウジョウバエ複眼原基細胞で大量発現させると成虫複眼が異常となる。この表現型を指標とした大規模遺伝学的スクリーニングにより、EGFR経路に関わる遺伝子が遺伝学的相互作用因子として同定できた。またG9a欠失変異系統と野生型胚のRNA-seq解析により、分節遺伝子発現レベルが、G9a欠失変異系統で増加していることが明らかになった。またヒストン脱メチル化酵素Jumonji(Jarid2)の精子形成過程における動態も明らかにした。2.雄減数分裂と精子形成に必要なRNA結合タンパク質ファミリーの解析:ショウジョウバエのCG12124遺伝子の産物は低分子量RNA U7と結合する。この変異体は血球細胞の腫瘍を発症するが、RNA-seq法により調べたところ、変異体でコントロールの2%以下に発現低下していた遺伝子の多くは精巣内で発現がピークになるものであった。そのハイポモルフ変異体は雄不妊になり、減数分裂時の染色体分配に異常が認められた。同タンパクは減数分裂前の細胞核内でHLB複合体を作り、ヒストン遺伝子座に結合し、その転写に必要であった。このタンパクがコアヒストンの発現を介して、減数分裂に必要な遺伝子群を転写制御している可能性が考えられた。ヒト相同遺伝子は血管拡張性失調症アタキシアの原因遺伝子の一つと報告されているので、哺乳類研究にも役立つ。
2: おおむね順調に進展している
予定していたように、dG9aと相互作用する遺伝子群が同定できた。またRNA-seq解析により、G9a標的遺伝子群と雄減数分裂と精子形成に必要なRNA結合タンパク質の標的RNA群の同定ができ、当初の計画のように順調な進展が見られた。
これまでに同定できた標的遺伝子群の雄減数分裂と精子形成過程での働きを調査して行く。
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