研究実績の概要 |
CeおよびYbの価数転移の量子臨界現象の性質を明らかにするため、昨年度に引き続き理論研究を展開した。本年度は、臨界価数ゆらぎの量子輸送現象へ影響を理論的に解析するとともに実験との比較を行った。 特に、当該新学術領域研究の各実験研究との比較により、以下のような成果が得られた。 これまで、CeIrIn5の圧力下でCeの価数クロスオーバーが生じている可能性を理論的に指摘していたが、評価者の北岡教授の実験グループにより、In-NQR周波数の変化がP=2.1 GPa付近で変化することが観測された(M. Yashima et al., PRL 109 (2012) 117001)。この結果は、本研究の理論的予言を裏付けるものであり、Ce115系においても価数転移の臨界点がその物性に影響を及ぼしていることを指摘してきた本研究の成果を支持している。 また、YbRh2Si2においてYbサイトの4f電子と5d電子がフェルミ準位近傍のエネルギーバンドに寄与していることが、A01-002班の山上教授らの実験グループによる3d-4f共鳴光電子分光測定により観測された(A. Yasui et al., PRB 87 (2013) 075131)。この結果は、Ybのオンサイトの4f-5d軌道間のクーロン相互作用が物性に重要な役割を果たしていることを強く示唆しており、本研究における基本モデルである拡張周期アンダーソン模型の妥当性が当該新学術領域の実験研究により明らかにされた意義がある。
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