研究実績の概要 |
研究目的:CeおよびYb化合物への動的平均場理論(DMFT)バンド計算の適用により、4f電子系の光電効果、動的磁気励起、フェルミ面構造(FS)を統一的に捉える第一原理計算の枠組みをつくる。補助的1不純物問題を解くNCAf2(non-crossing approximation with f2 vertex correction)ルーチンの独立化と計算安定性を高め、これを他のバンド計算グループのプログラム群と連結して共同研究を進める。
実施計画とその結果:申請時に稼働中のLMTO+NCAf2vcコードのプログラムをversion(V)1として、(1)V1をCePd3,CeRh3,CeSn3,CeIn3等立方晶系へ適用し、計算法のノウハウを蓄積する。(2)CeRu2Si2等非立方晶系への適用が可能となるよう拡張を行う。(3)NCAf2vcの独立化を行うこととYb系に適用可能なコードに拡張して、汎用性の高いV2コードを開発する。
(1)の部分は完了し結果を公刊した。DMFT計算で得られたFSは、近藤温度(TK)の高いCePd3~CeSn3では局所密度近似(LDA)計算の結果と類似であり、TKの低いCeIn3では異なったFSとなることが見いだされた。4f系への計算でLDAと異なるFSが得られたのは初めてである。これらのすべてケースでサイクロトロン質量も含め実験と合理的な一致を示した。(2)のCeRu2Si2についてはc-f成効果により生じる結晶場基底状態は実験で期待されるスキームと矛盾した。しかし、基底状態が合致するようf順位パラメータ調整をするとFSも実験に合致するようになることを見出した(公刊準備中)。(3)についてはYbCu5の価数の非単調な圧力依存性にたいする原研計算センターの鈴木氏の理論的解析にV2コードの一部を提供し、共同研究を進める等、進展を図っている。
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