公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
質量を持たないDirac電子は、その内部自由度に起因して2成分の波動関数で記述される。最も典型的なDirac電子系であるグラフェンでは、この2成分はハニカム格子の二つの副格子の存在に由来する。一方、トポロジカル絶縁体の表面Dirac電子の場合、2成分はスピン自由度に起因し、磁気的性質を支配する。したがって、2成分波動関数の持つ特徴がどこにどのように現れるかを知ることは、スピントロニクス応用にとって重要である。我々は、代表的なトポロジカル絶縁体Bi2Se3を磁場中分光イメージング走査型トンネル顕微鏡によって調べ、不均一なポテンシャル中をドリフトするLandau軌道のエネルギー構造、空間構造に2成分波動関数の特徴を探った。その結果、通常の質量を有する電子と異なり、n>0のLandau準位がポテンシャルの底で2つに分裂すること、Landau軌道の空間分布に期待されるn個の節が現れないこと、の2つの大きな特徴を見出した。ポテンシャルの空間分布を取り入れた2成分Diracモデルで結果を解析したところ、ポテンシャルの底における準位の分裂は2成分を直接反映していること、また、各成分の節が空間的に異なる場所に現れるため、分光イメージングで解像される波動関数の振幅では節が消失することが分かった。この結果は、異なるスピン成分が空間的に異なる場所に現れることを意味しており、ポテンシャルの空間変化に伴い、非自明なスピン磁化の空間構造が現れることを意味している。したがって、人工的なポテンシャル制御によってDirac電子のスピンを制御するという新しいスピントロニクスの手法につながることが期待される。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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ACS Nano
巻: 7 号: 5 ページ: 4105-4110
10.1021/nn400378f