公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本研究では、高圧中性子回折を用いて二水素結合物質の精密構造解析を行い、高圧下における二水素結合の挙動や、それが構造や反応性に与える影響を明らかにすることを目的としている。NH3BH3とNaBH4・2H2Oの二種類の二水素結合物質について、予めダイヤモンド・アンビル・セル(DAC)を用いた粉末X線回折(XRD)実験で予備実験を行った後、パリ-エジンバラ・セルを用いJ-PARC BL11で中性子回折実験を行った。NH3BH3は約30 GPaまでのXRD実験で、従来報告されていた圧力誘起相転移(1.5 GPaと8 GPa)のほかにも相転移(約13 GPa)を確認し、さらに高圧でのアモルファス化(約25 GPa)を初めて観測した。ND3BD3も同様の挙動を示し同位体効果は認められなかった。ND3BD3の中性子回折実験を約7 GPaまで行い、常圧の水素間距離(約2.2A)が1 GPaで約2.0Aにまで縮むことが分かった。また、1.5 GPaでの最初の圧力誘起相転移では、ND3BD3分子の配列する角度が変化し、一部の水素間結合距離が約2.2Aに広がることが確認された。これらは、二水素結合を有する物質の水素間距離が2.0Aを限界値とし、分子の圧力誘起再配列が起きたことを示唆している。一方NaBH4・2H2Oは、約11 GPaまでのXRDでは約4.5 GPaでNaBH4とH2O(ice-VII)に分解した。分解生成したNaBH4は、ice-VIIの存在とは無関係に6 GPaと7 GPaで従来報告されている圧力誘起相転移を起こした。除圧課程では逆反応が起こり、約3 GPaで再びNaBH4・2H2Oが生成した。一度分解した結晶水含有物質が圧力依存で再合成されることは興味深い。近くNaBD4・2D2Oの中性子回折実験を行い、その詳細を明らかにする予定である。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (31件) 備考 (1件)
J. Chem. Phys.
巻: 137 号: 7 ページ: 74505-74505
10.1063/1.4746017
Journal of Alloys and Compounds
巻: 541巻 ページ: 111-114
10.1016/j.jallcom.2012.06.123
Sci. Technol. Adv. Mater.
巻: 13 号: 5 ページ: 54401-54401
10.1088/1468-6996/13/5/054401
高圧力の科学と技術
巻: 22 ページ: 26-32
10030553295
Photon Factory News
巻: 29 ページ: 17-21
巻: 21 号: 3 ページ: 213-220
10.4131/jshpreview.21.213
10029831718
Physics and Chemistry of Minerals
巻: 38 号: 10 ページ: 777-785
10.1007/s00269-011-0450-3
http://samurai.nims.go.jp/NAKANO_Satoshi-j.html