配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2012年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2011年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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研究実績の概要 |
古細菌は環状トポロジーを有する脂質分子を細胞膜に持つことで、高温、高塩濃度などの極限環境に適応していると考えられている。我々は、これに着想を得、両親媒性ブロック共重合体により環状脂質分子を模倣し、ミセルを形成することでトポロジー効果をナノスケールにおいて増幅し、その耐熱性および耐塩性を飛躍的に向上させることに成功した。そこで今回、分子集合体の構築によるトポロジー効果増幅の概念をマクロスケールにまで拡張するために、環状両親媒性ブロック共重合体よりヒドロゲルを構築し、相転移挙動とゲスト分子の放出挙動を調査した。 先ず、ポリエチレンオキシドと、ポリブチルアクリレートとからなる直鎖状AB型およびABA型両親媒性ブロック共重合体(L-AB, L-ABA)、並びに対応する環状AB型両親媒性ブロック共重合体(C-AB)を合成した。 続いて、これらの共重合体よりヒドロゲルを作製した。得られたヒドロゲルのゾル-ゲル転移挙動を試験管倒立法により評価したところ、C-ABのゾル-ゲル転移温度は35, 40, 45, 50 wt%の濃度においてそれぞれ25, 35, 40, 45 °Cと測定され、対応するL-ABおよびL-ABAに比べ低い転移温度を持つことが明らかとなった。これは、C-ABが環状構造を有しているため、高分子鎖の絡み合いが抑制されたことが理由として考えられる。 さらに、水溶性の蛍光分子として知られるFluorescein sodium salt(FSS)をヒドロゲル中に担持し、水中への放出を試みたところ、L-ABおよびL-ABAによるヒドロゲルからは時間経過に伴う明確なFSSの放出が観測された。一方、興味深いことにC-ABによるヒドロゲルからの放出はほとんど見られなかった。すなわち、直鎖状から環状へのトポロジー変換に伴って、ヒドロゲルのゲスト保持能力が大きく向上するという効果が見出された。
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