配分額 *注記 |
7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2012年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2011年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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研究実績の概要 |
1原核生物は様々な薬剤に対して耐性を獲得するため、細胞膜上に多剤耐性トランスポーターを発現させている。一方、多剤耐性トランスポーターの発現は、多剤耐性転写制御因子(MDR-GR)により制御されており、MDR-GRが細胞内に侵入した薬剤を認識し、多剤排出トランスポーターの転写を亢進させることでその細胞膜上での発現を増大させる巧妙なシステムが構築されている。本年度はこのMDR-GRに着目し、研究を推進した。MDR-GRにはTetR, MerR, PadRと3種類のファミリーが知られており、それぞれ異なる多剤認識機構を持つと考えられる。そのうちPadRファミリーに属するLmrRは、他のMDR-GRとは異なり二量体形成面において挟み込むようにして1分子の薬剤を認識するため、薬剤の多様な構造に合わせて、分子全体の構造を変化させる必要がある。LmrRの薬剤非結合状態、結合状態における運動性を比較することで、分子の揺らぎと多剤認識機構との関係をNMRを用いて解析した。薬剤が結合していない状態において解析を行ったところ、薬剤認識部位のシグナル強度がその他の部位に比べて顕著に低く、またシグナルが観測されない残基が複数存在することが判明した。またLmrRの主鎖アミド基の緩和解析を行った結果、N, C末端およびループ部分以外にC末端薬剤結合へリックスの一部がps-ns領域の早い運動性を示すことが明らかとなった。またN, C末端薬剤結合へリックスは全領域にわたり大きなT1/T2値を示し、ms-usの遅い運動性を有することが明らかとなった。これらの結果はLmrRが非結合状態においては薬剤結合部位に多型を保持することで、様々な薬剤に対する結合親和性を保障していることを示唆し、多剤耐性薬物トランスポーター等の基質認識機構の理解にもつながるものと考える。
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