研究領域 | 高次π空間の創発と機能開発 |
研究課題/領域番号 |
23108706
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
野口 巧 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60241246)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2013-03-31
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研究課題ステータス |
中途終了 (2012年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2012年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2011年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 光合成 / 光化学系II / 赤外分光 / π系共役色素 / 電子移動 / 水分解 |
研究概要 |
1.光化学系IIのキノン電子受容体の酸化還元電位コントロール:光化学系IIに存在するキノン電子受容体Q_A,Q_Bについて、Q_B部位の相互作用がどのようにQ_A部位のプラストキノン分子に伝達するのかを、量子化学計算を用いて調べた。その結果、Q_A-His-Fe-His-(Q_B)のヒスチジン側鎖および非ヘム鉄原子を介した架橋構造における水素結合及び電荷効果によって、Q_B部位での相互作用がQ_Aに伝播し、その酸化還元電位に影響を与えることが示された。 2.光化学系IIのQ_B部位に結合する除草剤の光傷害への効果:次に、Q_B部位に異なる種類の除草剤を結合させた際の、光化学系IIの光傷害過程を調べた。その結果、フェノール系除草剤では光傷害が促進され、尿素系除草剤では逆に光傷害が緩和されることが示された。この現象はQ_B部位からQ_Aへの相互作用伝達によるQ_Aの酸化還元電位の変化(フェノール系除草剤はQ_A電位を上昇させ、尿素系除草剤は電位を低下させる)によって説明された。また、いずれの場合も、クロロフィル二量体P680はQ_Aよりも遅れて失活することから、光化学系IIはQ_A-アニオンによるクロロフィル三重項の消光という光保護作用を持つことが実験的に示された。 3.生体πナノ電極と金ナノ粒子の結合による人工光水分解ナノデバイスの開発:π系コファクターのナノワイヤーとマンガンクラスター電極よりなる生体πナノ電極である光化学系II蛋白質を金ナノ粒子に結合させ、ハイブリット型の人工光水分解ナノデバイスを作成した。得られた金ナノ粒子-光化学系IIナノデバイスは、光照射により水を分解し、酸素を発生することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フーリエ変換赤外分光法および量子化学計算によって、π電子系電子伝達コファクターであるキノン電子受容体Q_A、Q_Bの酸化還元電位の制御機構に関して多くの知見が得られ、またその酸化還元電位の制御が光化学系Hの光傷害機構に関わるという実験的証拠を得ることができた。また、生体πナノ電極と呼べる光化学系II蛋白質と金ナノ粒子を用いて人工光水分解ナノデバイスの作成に成功した。さらに酸素発生マンガンクラスターからの直接的な電子受容体として働くチロシン側鎖(Yz)について、フーリエ変換赤外スペクトルを測定することによって、その水素結合状態についての情報を得た(未発表)。これらのことから、研究はおおむね計画通りに進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、光化学系IIにおけるキノン電子受容体の構造と電位制御機構についてのフーリエ変換赤外分光法及び量子化学計算による研究をさらに進めるとともに、チロシンYzの構造、反応機構の研究(現在進行中)および、マンガンクラスターにおける水分解反応に重点をおいて研究を行う。特にマンガンクラスターの配位子または近傍に存在するπ共役系を持つアミノ酸側鎖(カルボキシル基、イミダゾール基、グアニジル基)の構造と水分解反応における役割、基質水分子との相互作用などに注目して研究を行う。
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