配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2012年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2011年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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研究概要 |
本研究は二つのねじれたπ空間系I,IIについて,九つの研究実施項目(1)-(9)からなる.本年度は,昨年度に完了できなかった,系Iの基質1の各種誘導体の(1)合成と,(3)シングルおよびダブルレーザーフラッシュフォトリシス(シングルおよびダブルLFP)の実験から開始した.特に(3)に関しては,これまでの基質を用いた分子間電子移動反応では好まざる副反応があったことから,分子内三重項エネルギー移動反応でトリメチレンメタンビラジカル(TMM)を発生する目的で,ベンゾフェノン(BP)部位を有する1の誘導体を,設計・合成した.以下,この光化学反応特性を種々の条件で検討した結果について述べる.低温マトリクス中で測定したこの基質のフォトルミネッセンス(PL)スペクトルには,BP部位の燐光だけでなく,励起TMMの発光帯が580nmに確認された.恐らく,連続波励起光により分子内三重項エネルギー移動反応が進行して生成した基底TMMがマトリクス中で捕捉され,これがさらに光吸収して励起TMMとなり,発光したものと考えられる.即ち,段階的に二つの光子が関与する機構である. 室温において355nmパルス光で励起するシングルLFPの過渡吸収スペクトルでは,基底TMMの吸収帯が観測された.また,同条件下での過渡発光スペクトルでは,励起TMMの発光帯が観測された.これも上記と同様に,二光子が関与する反応機構であることが,シングルLFPで用いた355nm光の光強度効果の実験,およびダブルLFP実験(第一パルス光励起(355nm)の1μ秒後に第二パルス光励起(532nm))から明らかとなった.今後は,発光量子収率や寿命などの詳細を検討する必要がある. また,系IIの(8)「励起有機πラジカル系の軌道相互作用」の解明についても現在検討中であるが,これまでの成果を日本語解説文としてまとめた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で扱う反応系,平成24年度の目的,および研究実施項目は以下の通りである.本年度は,昨年度に一部終了しきれなかった基質の1の(1)合成と,(3)シングルおよびダブルレーザーフラッシュフォトリシスの実験から開始し,期待する進展が得られた.また,(8)「励起有機πラジカル系の軌道相互作用」の解明については,現在検討中であるが,一応の成果を日本語解説文としてまとめた.4-6月の3ヶ月としては予定通りの進度であり,上記の自己点検評価とした. 【反応系】 ねじれたπ空間系(I):2,2-ジアリールメチレンシクロプロパン(1)-三重項励起トリメチレンメタン(^32^<・・*>) ねじれたπ空間系(II):2,5-ジアリールー1,5-ヘキサジエン(3)-一重項励起6員環1,4-ビラジカル(^14^<・・*>) 【目的】 (1)励起ビラジカル^32^<・・*>および^14^<・・*>の熱ルミネッセンス(熱発光)の観測と機構解明(2)励起ビラジカル^32^<・・*>を用いた「有機ラジカルEL」の創製 (3)励起ビラジカル^14^<・・*>を用いた「励起有機πラジカル系の軌道相互作用」の解明 【(当初の平成25年3月までの)研究実施項目】 平成24年度は,ねじれたπ空間系(II)の基質について,以下の項目(1)~(9)を行い,革新的「有機ラジカルEL」の開発と「励起有機πラジカル系の軌道相互作用」の解明にあたる.特に,後者について重点的に研究を行い,理論上最大の軌道相互作用の発現について検討する. (1)合成:(2)γ線およびX線誘起熱ルミネッセンス,(3)シングルおよびダブルレーザーフラッシュフォトリシス,(4)量子化学計算,(5)置換基効果の評価,(6)「有機ラジカルEL」のメリットの考察,(7)「有機ラジカルEL」の開発,(8)「励起有機πラジカル系の軌道相互作用」の解明,(9)総括. 本研究は平成24年度に廃止する。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年6月29日より,あらたに新学術領域研究(感応性化学種が拓く新物質科学)の計画班員になるため,本新学術領域研究の公募班員としては,平成24年6月28日をもって辞退した.残された課題については,新たな新学術領域研究の課題の一つとして行う予定である. 本研究は平成24年度に廃止する。
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