研究実績の概要 |
側鎖を変化させることによりテトラセン分子の固体光物性が変化する現象が他の共役系骨格を有する分子においても見れらるかを確認するために、ジベンゾ[b,k]クリセン誘導体の合成と固体状態の構造と光物性の調査を行った。ジベンゾ[b,k]クリセン誘導体は、1,5-ナフタレンビスアライン前駆体とアルキル基を有するジフェニルイソベンゾフランとのDiels-Alder反応を経由して合成された。アルキル側鎖の種類としてはt-ブチル、ブチル、ペンチル、ヘキシル基を導入することに成功した。これらの分子は溶液状態ではほぼ同一の光物性を示した。しかし、固体状態では違いが見られた。まず固体の色調は、t-ブチル体で黄色、ブチル体で黄色味がかったオレンジ色、ペンチル体でかすかにオレンジ色がかった黄色、ヘキシル体で黄色となった。しかし、乳鉢ですりつぶすろとれも一様な黄色に変化した。また、固体の蛍光量子収率はブチル体が最大値(0.69)となり他の誘導体より大きくなる結果となった。固体状態の物性の違いの原因を探るために、粉末状でしか得られなかったt-ブチル体を除いて、X線単結晶構造解析を行った。アルキル側鎖を除いてジベンゾ[b,k]クリセン骨格部分は類似した構造となっていた。しかし、ジベンゾ[b,k]クリセン環の配列に大きな違いが見られた。ブチル体ではπ重なりが見られなかったのに対し、ペンチル体とヘキシル体ではπ重なりが見られた。この違いが固体光物性に違いにつながったと考察された。
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