公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本研究によって以下のことが明らかとなった。(1)海底熱水は、超塩基性岩をホストとする水素に富んだ熱水と、堆積物の関与するメタンに富んだ熱水、その他の硫黄に富んだ熱水の三種類に大別できることがわかった。水素とメタンに富む熱水は、それぞれ超塩基性岩の蛇紋石化作用と堆積物中の有機物の分解によるものである。硫黄はすべての熱水で高く、水素とメタンに富む熱水以外では相対的な寄与が大きい。熱水から代謝反応によって取り出せるエネルギーは、超マフィック岩ホスト熱水では水素酸化反応が、堆積物ホスト熱水ではメタン酸化反応が、そしてその他の熱水においては硫黄酸化反応が最も大きいことが明らかとなった。(2)多くの海底熱水系において、ミキシングに伴う鉱物沈殿(主として硫化物)が生物の代謝反応に与える影響は小さいことがわかった。ただし、硫黄タイプ熱水のうち鉄の濃度が高い酸性岩ホストの熱水だけは、ミキシングの際に黄鉄鉱(FeS2)の沈殿が起こると、高混合比(=低温)領域において、鉄酸化反応のエネルギーが硫黄酸化反応のそれを上回る場合があることが明らかとなった。このことが、ある種の熱水に鉄酸化型バクテリアのマットが発達することの理由である可能性が考えられる。(3)熱水から得られる代謝エネルギーと、生物を維持するのに必要なメンテナンスエネルギー、そして熱水のフラックスを合わせて考えることで、熱水系で維持することが可能なバイオマスの最大量を見積ることに成功した。その結果、海底熱水系で育むことのできる生物は、ほとんど全てが硫黄酸化反応のエネルギーに依っていることが明らかとなった。さらに、すべての海底熱水系を合わせても、陸上生物の総量に比べて極めてわずかな量の生物しか維持できないということも明らかとなった。これは、海底熱水から放出されるエネルギーが、太陽から受けるエネルギーに比べて桁違いに小さいことと整合的である。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Frontiers in Microbiological Chemistry
巻: 3 ページ: 89-89
10.3389/fmicb.2012.00089
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地球化学
巻: 46 ページ: 1-33
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