公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
今年度は細胞内Aβオリゴマーの毒性にタウが必要かどうかを初代培養ニューロンおよびマウスモデルを用いて調べた。野生型マウス由来ニューロンおよびタウKOマウス由来ニューロンにOsaka変異APPを導入し、野生型APPあるいは空ベクターを導入したときに比べ、スパインの形成やオルガネラの分布に差があるかどうかを調べた。野生型ニューロン、タウKOニューロンいずれの場合でも、Osaka変異APPの導入により、細胞内Aβオリゴマーの蓄積とともに、スパインの形態異常とERおよびミトコンドリアの分布異常、BDNFの軸索および樹状突起内輸送の低下が確認された。野生型APPでは異常がみられなかった。これらの結果は、細胞内Aβオリゴマーの毒性にタウは不必要であることを示している。次に、Osaka変異APP-TgマウスとタウKOマウスを交配し、このbigenicマウスでOsaka変異APP-Tgマウスと同様のシナプス機能障害や認知機能障害が生じるかどうかを調べた。8カ月齢でモリス水迷路を用いてマウスの空間参照記憶を調べたところ、タウKOマウスは異常がなかったが、APP-Tgマウスで記憶の低下がみられ、bigenicマウスではそれがさらに悪化していた。同月齢で脳海馬スライスを作製しシナプス機能を電気生理学的に測定したところ、タウKOマウス、APP-Tgマウスで同程度のLTP(長期増強)の抑制がみられ、bigenicマウスではそれがさらに悪化していた。以上の結果は、細胞内Aβオリゴマーの毒性にタウは不必要であるばかりでなく、むしろタウが欠失するとシナプス機能に異常が生じやすくなり、そこに細胞内Aβオリゴマーが加わると、その異常がさらに悪化することを示唆している。タウの欠失が神経機能に悪影響を及ぼすという今回の結果は従来の報告と異なるものであり、その機序解明は今後の検討課題である。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Am J Pathol
巻: in press
Dementia Japan
巻: 26 ページ: 225-241
巻: 26 ページ: 300-310