公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
慢性脱髄巣を形成するには、髄鞘が変性するだけでなく、その再生が抑制されなければならないため、われわれは髄鞘再生抑制機構の解明に取り組んできた。種々の脱髄モデルマウスにおける髄鞘の再生期と抑制期における網羅的な遺伝子発現の解析から、われわれは髄鞘再生期にのみ発現し、抑制期には発現の停止する遺伝子としてシスタチンF(CysF)を同定した。シスタチンFはミクログリアに発現しており、各種脱髄モデルやヒト多発性硬化症においてもミクログリアがCysFを発現している間のみ髄鞘が再生していることが明らかとなった。CysFはシステインプロテアーゼの阻害作用を有するが、特にカテプシンC(CatC)を強力に阻害することが報告された。CatCはIL1βやTNFαの活性化に関与することが知られており、CysFの発現消失はCatCを活性化し、炎症性サイトカインの活性化を促進する可能性がある。以上の結果より、CatCとCysFのバランスにより髄鞘再生が制御されている可能性が強くなったため、CatCとCysFそれぞれの遺伝子発現を自由に制御できるマウスを作製した。前年度はCysF発現抑制マウスにおいて実験的自己免疫性脳脊髄炎によって過剰な脱髄反応が認められ、その脱髄巣において強いIL1βの免疫反応性が認められることを報告した。また慢性脱髄巣を形成するPLP過剰発現マウス(4eマウス)において、早期の髄鞘形成期、変性・再生期にCatC発現を無くしても、顕著な影響は現れなかった。この期間にまだCysFの発現が強く残っているため、今回はより後期の慢性脱髄期を解析したところ、CatC発現を無くすると髄鞘再生が維持され、脱髄の軽減されることが明らかとなった。このように、CysFやCatCの発現を調節することで、脱髄の抑制が可能であることが示された。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)
PLoS One
Journal of Neuroscience Research
巻: 89 ページ: 639-49