研究実績の概要 |
トポロジカル相転移を光によって引き起こす手法の開拓を目指し、分子性有機物質に着目した研究を行ってきた。申請者の提案した光誘起トポロジカル相転移が世界的にも広く認識され、例えば光学系を用いた実現がNature誌に掲載された(Rechtsman et al. Nature, 496, 196 (2013))。 本年度は(i)モット絶縁体の光励起現象 (Oka PRB 2012), (ii)高温超伝導体の光誘起現象(投稿準備中)をについて解析を行った。同時に、(1)量子磁性体の光誘起トポロジカル相転移(Takayoshi et al. arXiv:2013)、(2)多層型高温超伝導体の転移温度(Nishiguchi et al. arXiv:2012)、(3)乱れた系のレーザー光を用いた電気伝導の制御(Kitagawa et al. PRB 2012)についてまとめた。
強相関系の非平衡現象:有機物質は強相関効果が幅広く現れることが知られている。特に、有機モット絶縁体を取り上げ、レーザーを照射した相関電子系に現れる非平衡電子状態の解析を行い、Oka PRB 86, 075148 (2012)にまとめた。この論文では一次元ハバードモデルの厳密解と量子トンネル理論を組み合わせた手法を開発し、また、得られた知見としては照射するレーザー光のエネルギーによって光キャリア分布の振る舞いが定性的にも異なることをみいだした。 光誘起電気伝導:強力なレーザーを照射した電子系の電気伝導について調べた。系の電気伝導を正確に決めるためには電極との結合による緩和機構を考えた上で、大規模な系で計算を行う必要がある。この目的を達成するため「Floquet+Landauerの方法」という手法を開発し、Dirac電子系の光誘起伝導に応用した(Kitagawa et al. Ann. Phys. (2012))。
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