公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
HMTSF-TCNQは擬一次元の有機伝導体である。この物質は常圧で30 K以下でCDW観測されるが、1 GPaの圧力でCDWがほぼ抑えられる。この1 GPaの圧力下で磁場誘起相について、それがCDW起源か、SDW起源かという問題の他、(TMTSF)2X塩で見られた磁場誘起SDW相との類似点や相違点について研究した。今まで、HMTSF-TCNQの良質な単結晶の入手は困難で、それがこの物質の本質でもあり、実験研究の限界を決めているように考えられてきた。しかし、最近、共同研究者により、単結晶性の高い試料の製法が編み出されたことが、本件を真の単結晶で改めて研究する動機となった。今回用いた試料は事前にX線で全品検査を行い、Bragg点を鋭く示す試料に限った。行った主たる実験は、磁気抵抗およびAMROである。高圧セルに再現性確認のため2個の試料を同じ向きに入れ1.1 GPaの圧力にした。そのような圧力セルを2個用意し、ふたつ目のセルでは最初のセルと異なった向きに2個の試料をセットした。1軸の実験が終わった後は、室温で圧力セルを90度回転させて、再び低温での磁場中、回転実験を行った。この方法で、同じ圧力セル内の2個の試料では再現性を確認しながら、3方向に異方性のある低次元試料の3つの軸周りのAMROを測定することができた。今回、良質単結晶での実験となったため、回転に対する対称性などにみられるデータの質が格段に向上した。圧力でCDWが抑えられる圧力1 GPaの圧力下で3つの軸の方向に磁場を回転し、AMROなどを通じ、磁場誘起相転移が起こる条件を求めることができた。即ち、磁場のz成分が10 Tのときに起こるため、軌道起源であることが明瞭に示された。また、この相転移は一次の相転移である。これらの磁場の向き、相転移の次数などの点は(TMTSF)2Xの磁場誘起SDWに似ていることが明らかになった。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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