公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
我々はこれまで悪性細胞に発現する糖鎖性の細胞接着分子について、その癌における発現誘導機構と病態生理上の機能を研究し、現在までに、発癌初期の糖鎖合成遺伝子のエピジェネティック・サイレンシングによる糖鎖性の細胞接着分子の発現誘導や、進行期における癌細胞の低酸素抵抗性の獲得に伴う糖鎖性の細胞接着分子の発現亢進の機構を解析してきた。今年度は、癌のプログレッションに伴う上皮間葉転換(EMT)に伴う糖鎖性の細胞接着分子の発現の変化と、その背後にある発現の転写調節機構について検索した。培養大腸癌細胞を無血清培地中で二種類の細胞増殖因子(EGFおよびFGF2)の存在下で培養してEMTを誘導したところ、E-カドヘリンの発現が低下し、SNAIL1, ZEB1の発現が誘導され、EMTが起こっていることが確認された。この時、細胞接着糖鎖であるシアリルルイスxおよびシアリルルイスaの発現が有意に亢進した。これらの糖鎖が細胞接着分子E-セレクチンの特異的リガンドであることから、EMTを起こした癌細胞へのE-セレクチンの結合を検索したところ、結合の有意な増強を認めた。EMTに伴いシアル酸転移酵素などシアリルルイスx/シアリルルイスa糖鎖の合成に関与する糖転移酵素遺伝子の転写レベルの上昇を認め、その背後にEMTに伴う転写因子c-Mycの活性増大があることを見いだした。また、EMTに伴いシアリルルイスx/a糖鎖の合成経路と基質を競合して合成阻害の方向に働く糖転移酵素遺伝子の転写レベルの低下が見られ、その背後にはEMTに伴う転写因子CDX2の発現低下があることを見いだした。以上の成果は、癌のプログレッションに伴う癌細胞のEMTにおいて、転写因子c-MycとCDX2が協調して、癌細胞の血管内皮細胞との接着を媒介する糖鎖性の細胞接着分子の発現を誘導することを示すものである。以上の成果を原著論文として発表した。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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