公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
真核細胞の核は核膜で覆われ、核―細胞質間の物質の出入りは厳密に制御されている。そのため、真核細胞が内外の環境変化に応じて、遺伝情報に基づいた適切な反応系を働かせるには核―細胞質間分子輸送が欠かせない。これまでに、特定の蛋白質輸送受容体による核―細胞質間輸送システムが、転写因子の輸送調節を通し、細胞分化に重要な役割を果たすことを示した。一方、動物胚の発生の局面では、胚の極性の形成や組織の分化の仕組みなど、解明されていない事象が多く残されている。機能性蛋白質の輸送制御システムが、未解明の発生の仕組みの一部を担っている可能性が十分にあると考えられる。本研究では核―細胞質間蛋白質輸送システムに焦点を当て、哺乳類の発生・分化の場面での細胞核への情報伝達制御を明らかにし、遺伝情報の発現場の分子基盤に迫ることを目指した。これまでに、核輸送受容体が分化を促進する特定の転写因子の核への輸送を阻害するという新規機能により、胚性幹細胞の運命決定に関与することを明らにした。核輸送受容体importinαに新たな積み荷蛋白質認識部位があり、分化を促進する転写因子を結合して核への輸送を阻害する。この輸送阻害活性により、幹細胞では不要な転写因子が核から排除され未分化状態が維持されると考えられる。このような阻害活性は積荷タンパク質の結合部位のアミノ酸配列に依存することもつかんでいる。この発見は世界初であり、細胞の運命決定のメカニズム解明に重要な知見を与える。昨年度はマウスES細胞抽出画分を細胞全体と核のみに分けてimportinαの結合分子質量分析を行い、多数の蛋白質を同定した。細胞質に局在するとされる蛋白質も同定されており、上述したimportinαの機能に関わる可能性もある。また、核たんぱく質も多数同定され、エピジェネティクス関連因子も多く含まれることが分かった。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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