公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
可塑的かつダイナミックなクロマチン高次構造制御の理解は、ゲノムおよびエピゲノム情報の維持、変換の分子基盤となると考えられる。本研究では、遺伝情報の時空間場としての細胞核と細胞機能の共役システムの解明を目指し、新規ヒストンH3結合因子Mlo2(HiTAP1)によるヌクレオソーム制御システムに焦点を当てて解析を進め、以下の結論を得た。HiTAP1は、既知のH3/H4シャペロンASF1と同様に単独でH3/H4と結合し、ヒストンシャペロンとしての活性を持つ。in vitroでH3/H4を解離させる活性を持つHiTAP1 C末端50アミノ酸の構造情報を基にした変異体を構築、精製して生化学的解析を行った。その結果、ヒトでも保存されている部位の変異によってH3/H4結合が弱くなることが確認され、この部位がH3/H4相互作用およびH3/H4分離に寄与することが示唆された。平成23年度にHiTAP1と転写との関連性を示唆する結果を得たため、HiTAP1のゲノム上での相互作用領域や標的となる遺伝子の探索を領域内の共同研究として行った。予想に反して、グローバルな遺伝子発現にはほとんど影響しないことが明らかとなった。しかし、既知のH3/H4シャペロンであるHIRAの欠損により発現低下する遺伝子群が若干上昇することや、転写阻害剤添加によりそれらの遺伝子発現が上昇したことから、HiTAP1はストレス応答などに関与することが示唆される。HiTAP1大量発現による増殖阻害が、H3/H4量低下時により顕著に見られることなどからHiTAP1が可溶性H3/H4量の制御に関与することを明らかにした。今後、HiTAP1の分子機能についてさらに解析を進めることで、既知のH3/H4シャペロンとの機能ネットワークも含めた動的な遺伝情報場の理解に繋がることが期待される。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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