公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
神経細胞間をつなぐシナプスにおける信号伝達効率を調整することで、情報の流れ方を変え、既存の配線を使いつつも、環境への適応・学習・記憶といった脳機能が達成されていると考えられる。ところが、脳内にどんな回路が実装されていて、個々のシナプスの可塑性がどのように進行するのかに関して、ほとんど検証が進んでいない。本研究では、まず、電気生理学・形態学・シミュレーションの全ての面で精緻な解析のしやすいcalyx of Heldシナプスを対象とした。シナプスにおける信号伝達特性を左右する重要な因子として、シナプス間隙へと放出されるグルタミン酸分子の数、および、細胞間隙におけるグルタミン酸の拡散係数が挙げられるが、この二つのパラメーターを求めることで、シナプス間隙におけるグルタミン酸の振る舞いを完全に表現することに成功した。続いて、網膜-外側膝状体-皮質へと伝わる初期視覚過程に関わる、メゾスコピック回路を対象とし、その特性を抽出することに挑戦。視神経線維一本を立て続けに刺激すると、応答が急速に抑制されることを見出した。細胞間隙における伝達物質拡散のシミュレーションを通して、シナプスから溢れ出た伝達物質が近隣のシナプスの受容体を脱感作させることで応答が抑制されるということが明らかになった。続いて、特定の脳細胞の活動を光操作することで、メゾ回路の書き換えを促し、回路特性の変化を生理学的に解析するという課題に取り組んだ。このために、神経やグリア細胞の活動を特異的に光で制御する方法を開発した。当初、目標としていた初期視覚回路の書き換えには成功しなかったが、光操作技術を用い、各種脳細胞間の信号伝達を操作することを通して、小脳メゾ回路におけるシナプス可塑性を誘導することに成功。個々の細胞間相互作用における変化が、メゾ回路の動作変更を誘導し、眼球運動学習といった個体全体の機能へ影響する様が評価できた。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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