公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
液性免疫の主なものに、体内に侵入した病原体を免疫グロブリン(抗体)によって排除する仕組みがある。液性免疫の破綻はアレルギー、自己免疫、免疫不全などの疾患と関係が深い。本研究では、喘息患者の肺胞洗浄液中に高濃度に含まれる脂質メディエーターAに注目し(投稿論文を準備中のため化合物名は伏せさせていただく)、新規の生体機能として液性免疫の関与について検討した。まず、脂質メディエーターAの特異的受容体を欠損したマウスを準備した。戻し交配を10回繰り返すことで、遺伝学的背景をC57BL/6マウスのものに近づけたコンジェニックマウスラインを樹立した。卵白アルブミンに感作したこのマウスに卵白アルブミンを吸引させて気管支喘息様の症状を惹起した。抗原に感作・曝露した受容体欠損マウスは同腹仔野生型マウスと比較して、抗原に対するIgEの血中濃度が有意に低下していた。好酸球浸潤を主とした喘息に特徴的な気道炎症の症状も野生型マウスに比べて受容体欠損マウスでは有意に減弱していた。肺胞洗浄液中のTh2サイトカイン濃度も低かった。以上の結果は、脂質メディエーターAがTh2型の免疫反応、即ち液性免疫の誘導に重要であるという新しい知見を示唆している。また、脂質メディエーターAの特異的な受容体は幾つかのサブタイプが知られているが、本研究で注目したサブタイプを介して液性免疫が調節されることも併せて示唆された。本研究は、致死的なアレルギー疾患である気管支喘息の病態緩和及び治療の新規標的分子を提供できる可能性がある。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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