配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2012年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2011年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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研究実績の概要 |
本年度は主として以下の研究成果を得た。 1.ATP等の部分体積・エンタルピーへの共存する金属イオンの効果の定量 本研究では、pHと塩濃度の調整のための一価の金属イオンには(K)イオンを用い、一定濃度のKイオン存在下の熱力学量を評価した。また、透析膜によるドナン効果のため、Kイオン電極と塩化物イオン電極によりイオン濃度を評価した。 精密密度測定により、ATP(およびKイオンとの複合体)の平均の分子体積はKCl濃度が75, 150 mMでそれぞれ0.28, 0.39 cm3/gであり、Kイオンの結合に伴って分子体積が顕著に増加することがわかった。これは、Kイオンの結合に伴って電縮した水和水が減少する効果が大きいと推定される。また、25 mM KCl存在下で3~50 mMのMgCl2共存での、ATP加水分解全体反応エンタルピーは-37 ~ -28 kJ/molとMgイオン濃度によって大きく増加することがわかった。また、この条件での加水分解反応に伴う水素イオンの放出数は0.8個となり、ここにも金属イオンの効果が見られた。 2.ATPとMgイオンとの結合の精密評価法 ATPとMgイオンの結合を等温滴定熱量測定により観測した結果、従来報告されていた、ATPとMgイオンの1:1と1:2複合体の他に2:1複合体が存在することがわかり、新しい解析モデルを提案した。解析の結果、300 mMのKCl存在下(pH 8.5, 25℃)では、MgATPにATPがもう1分子結合する時の結合定数は15 M-1, 結合エンタルピーは10 kJ/molであることがわかった。また、ADPについても同様の複合体が存在することが示唆された。ADPにMgイオンが2個結合することは、加水分解へのMgイオンの効果を理解する上で重要な知見と考えられる。
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