公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
ATP加水分解反応は,生体内で熱力学的に不利な化学反応を共役的に駆動するための発エルゴン反応である.反応物であるATPと,生成物であるADPとPiの間に水和状態の差があると予想されているが,ATP加水分解エネルギーにおける水和エネルギーの寄与は実験的に評価できていない.ATP,ADP,Piの良溶媒であるアルキルアミン/オクタノール溶媒系を用いて,これらの溶媒と水溶液間のATP,ADP,Piの分配係数を測定し,水相有機溶媒相分配のエネルギー(ギブスエネルギー変化)を求めた.これらのエネルギーと水溶液中のATP加水分解エネルギー(文献値)の差から,有機溶媒中での加水分解エネルギーを見積もった.その結果,水相有機溶媒相分配のエネルギーは有機溶媒や条件に依存して変化したが,有機溶媒中での加水分解エネルギーはほぼ一定で,水溶液中のギブスエネルギー変化の80~110%であった.次に,分配係数の温度依存性からファントホッフプロットによりエンタルピー変化を求めた.その結果,ATP,ADP,Piの水相有機溶媒相分配のエンタルピー変化の総和は,水溶液中での加水分解反応のエンタルピー変化(文献値)と同等で相殺されていた.つまり,有機溶媒中での加水分解反応のエンタルピー変化は非常に小さく,有機溶媒中での加水分解はエントロピー(自由度の増加)で駆動されていた.有機溶媒中での加水分解を非水和状態での加水分解と仮定すれば,ATP,ADP,Piの水和は,総ギブスエネルギー変化量には見かけ上影響を与えないが,その内容(エンタルピー変化とエントロピー変化のバランス)には大きな影響があると思われる.
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件)
Analytical Biochemistry
巻: 433 号: 1 ページ: 2-9
10.1016/j.ab.2012.10.002
Journal of Chemical Information and Modeling
巻: xxx 号: 5 ページ: 1200-1212
10.1021/ci300571n
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10.1016/j.ab.2011.12.050