公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
脳における血管と神経の相互作用はNeurovascular coupling(以下NVC)として知られており、グルタミン酸などの神経伝達物質が、アストロサイトの細胞内カルシウム上昇を介して血管調節因子であるプロスタグランジンの産生をひき起こすことが主要な経路と考えられている。しかし、マウスの生後発達におけるNVCの確立過程を脳スライス標本を用いて検討したところ、予想に反してアストロサイトのグルタミン酸に対するカルシウム応答は生後発達に伴って減少し、NVCもプロスタグランジンに依存しなくなることが明らかとなった(2011年度実績報告書参照)。2012年度の研究において、生後発達段階のNVCを薬理学的に検討したところ、アダルトにおける主要な血管調節因子はプロスタグランジンではなくアデノシンであることが見出された。この結果を受けて、脳スライス標本におけるアデノシン放出を検出する実験系を独自に開発し、生後発達に伴うアデノシン放出の変化を検討した。具体的にはHEK293細胞にGi共役型であるアデノシンA1受容体とGi/Gq融合タンパク質を発現させ、アデノシンに対して細胞内カルシウム上昇を示す細胞(以下、センサー細胞)を樹立し、この細胞の上におかれたスライスからのアデノシン放出をカルシウムイメージングによって検出した。その結果、電気刺激に伴うアデノシンの放出は生後発達に伴って増加し、これがアデノシンを介した血管調節と時期的に一致することが明らかとなった。また、神経活動に伴うアデノシン放出には、樹状突起におけるL型カルシウムチャンネルを介したカルシウム誘導性カルシウム放出が必要であることが同定された。以上の結果から、NVCの生後発達はアストロサイトを介した系から、樹状突起を介した系にスイッチすることがその実体であることが明らかとなった。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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