公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
胎盤のアロマターゼは外界のアンドロゲンを処理して胎児を環境アンドロゲン(ノイズ)から守ることで、内因性アンドロゲンによる性分化を保証しているとの仮説を検証するための研究を実施した。マウス、ウシ、イヌ、イルカ、ブタ、マーモセット、アカゲザル、ヒトの胎盤を入手し、それぞれの胎盤アロマターゼ活性とテストステロン値を測定した。その結果、テストステロン値はアロマターゼ活性と正の相関を示すことができた。一方、DHEAS 値とは相関しなかった。このことから、テストステロンを処理するためにアロマターゼが発現しているとする仮説が支持された。次に、それぞれの種の胎盤アロマターゼの発現プロモーターを検索した。その結果、マウスではPIIが、霊長類以外のその他のほ乳類では1f・I.2・ I.4に相当する性腺外プロモーター群が発現プロモーターになっていたのに対し、霊長類ではI.1(I.1)が特異的に発現していた。胎盤のアロマターゼ活性が、進化と共に増加しているという観察結果と併せ、妊娠期間が延長して性分化が胎児期に行われるようになったほ乳類では、胎盤にアロマターゼを発現させる必要が生じ、様々な既存プロモーターを駆使してアンドロゲン処理を行ったこと、霊長類では大量のDHEAS処理の必要が生じたために強力なプロモーターを新たに獲得したと推定された。ゲノム解析の結果、このプロモーターは4000万年前の真猿類の時代に内因性レトロウィルスの増殖によって生じたLTRの挿入によるものであること、その後の狭鼻猿類への進化に伴って生じた遺伝子変異により現在のI.1のスプライシングドナーサイトを獲得したことなどが明らかになった。霊長類でもアロマターゼの発現が不十分な一部の種では、性分化の破綻が生じていることが確認された。以上より、霊長類の進化に伴い、性分化と胎盤アロマターゼの共進化の一端を明らかにすることができた。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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