公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
ヒトの質感認知の脳神経メカニズムを知るために、これまでは局所脳損傷患者において質感認知障害の検討を進め、視覚性質感認知に両側後頭葉が重要な働きをしていることを明らかにしてきた。一方、認知症患者では傷んだ食品を食べたり、人に勧めたりする行動が見られることがあり、質感を含めた物の質的な変化の認知に何らかの異常がある可能性が示唆される。そこで、今年度は本領域の岡嶋克典氏(横浜国立大学)が作成した生鮮食品の画像刺激をご提供いただいて鮮度判断課題を作成し、認知症患者を対象に施行した。【対象】変性性認知症患者20名(軽度アルツハイマー病15名、その他5名;女性10名)。健常対照群 5名【方法】鮮度判断課題;野菜(キャベツ、人参、小松菜)を0から66時間まで系統的に劣化させた画像刺激を用い、野菜毎に鮮度の異なる2枚の刺激対を各10組作って、より新鮮な方を選択させた。輝度判断課題;同一鮮度の小松菜の輝度を6段階に変化させた画像刺激を用い、輝度の異なる2枚の刺激対を30組作って、より明るく見える方を選択させた。また、他の認知機能を評価するために標準的な神経心理学的検査を施行した。【結果】認知症群では鮮度判断課題の正答数21.3±4.5、輝度判断課題28.7±2.1と鮮度判断課題が有意に低下していたのに対し、健常群は両者に差がなかった。鮮度判断課題の成績は、認知症群が健常群に比べ有意に低下していた。また、認知症群の鮮度判断課題の成績は、輝度判断課題の成績と有意な相関を認めたが(r=0.45, p0.05)、全般的認知機能や視運動性課題の速度の指標とは相関がなかった。【考察】アルツハイマー病を中心とする変性性認知症患者では、画像における野菜の鮮度判断機能が低下していると考えられた。鮮度判断には種々の機能が関与しており、今後、影響する要因やその神経基盤を検討していく必要がある。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2013 2012 2011
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (6件) 図書 (2件)
Parkinsonism Relat Disord
巻: 19 号: 6 ページ: 628-633
10.1016/j.parkreldis.2013.02.014
Neuroscience Letters
巻: 515 号: 1 ページ: 66-70
10.1016/j.neulet.2012.03.020
Brain
巻: 135 号: 1 ページ: 162-169
10.1093/brain/awr321
Gastroenterology
巻: 143(5) 号: 5 ページ: 1188-1198
10.1053/j.gastro.2012.07.104
神経心理学
巻: 28 ページ: 23-28
Neuropsychologia
巻: 49 号: 7 ページ: 1962-1968
10.1016/j.neuropsychologia.2011.03.024
Movement disorder
巻: 26 号: 5 ページ: 837-843
10.1002/mds.23576
巻: 26 号: 4 ページ: 621-628
10.1002/mds.23602
Internal Medicine
巻: 50 号: 16 ページ: 1671-1678
10.2169/internalmedicine.50.4871
130000969367
臨床神経学
巻: 51 ページ: 930-933