研究領域 | 生涯学の創出-超高齢社会における発達・加齢観の刷新 |
研究課題/領域番号 |
23H03880
|
研究種目 |
学術変革領域研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅰ)
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
松永 篤知 金沢大学, 資料館, 特任助教 (50805760)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
|
キーワード | 民俗考古学 / 民族考古学 / 東アジア / 東南アジア / 生涯観 |
研究開始時の研究の概要 |
人間の生涯は、社会との相互作用の中で多様に変化するものであるが、時代によっても変わり得る。そこで、本研究では、過去と現代の生涯観の共通点・相違点を民俗・民族考古学的視点で明らかにした上で、人間の生涯観がどのような変遷を遂げて来たのかを社会的・文化的に解明することを目的とする。 よりリアルな生活復元を成し遂げるには、民俗・民族調査を積極的に導入した考古学的研究をする必要がある。具体的には、①遺物資料調査、②民俗調査・民族調査を2ヵ年計画で実施し、その成果を民俗・民族考古学的視点で統合し、東アジア・東南アジアにおける先史時代から現代までの生涯観とその変遷を解明する。
|
研究実績の概要 |
学術変革領域研究(A)「生涯学の創出-超高齢社会における発達・加齢観の刷新」(略称「生涯学」)の公募研究に位置付けられる本研究では、①遺物資料調査、②民俗調査・民族調査を2ヵ年計画で実施し、その成果を民俗・民族考古学的視点で統合して、東アジア・東南アジアにおける先史時代から現代までの生涯観とその変遷を解明する。 初年度である令和5(2023)年度は、まず当初計画通り、7月までを遺物資料調査と民俗・民族調査の準備期間とし、考古学・民俗学・民族学等の最新情報を悉皆的・徹底的に集め、研究の基礎となるデータ整理をした。このデータに基づいて、各種調査の対象(調査対象遺跡・調査対象地域)を決め、8月以降に各地で調査を実施した。 日本国内の遺物資料調査は年度末近くまで断続的に続けたが、海外での民族調査は調査期間を9月にしぼって実施した。本計画では中国も海外調査の対象になっているが、いまだ渡航制限が続いており、令和5年度の海外調査についてはタイ北部山地民の民族調査を集中的に実施することにしたためである。結果、ラフ・シェレ族をはじめとする山地民の暮らしと生活道具の実態について、詳細な情報を得ることができ、実りある調査となった。 「生涯学」共通の場での活動としては、8月(金沢会場)と3月(小田原会場)に開かれた領域会議でポスター発表をした程度であるが、独自の成果として、査読誌での論文発表と日本国内での講演に、当該年度の調査で得た知見を組み込んだ。前者は国内での遺物資料調査の成果であり、後者はタイでの民族調査の成果に基づくものである。 2ヵ年計画とは言え、あくまでも初年度であり、多くの論文や口頭発表として結実するまでには至っていないが、一部投稿済みで令和6(2024)年度に公開予定の成果もあり、計画としては順調である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「生涯学」の一環として、東アジア・東南アジアにおける先史時代から現代までの生涯観とその変遷を解明するために、①遺物資料調査、②民俗調査・民族調査を2ヵ年計画で実施するという本研究において、令和5(2023)年度の調査・研究は、「おおむね順調に進展している。」と言えると考える。当初計画では、7月までを準備期間とし、8月以降を各種調査の実施期間と設定していた。そして、特に大学の担当授業のない8月と9月は重点的な調査実施期間とし、10月以降には一度成果をまとめて発信することにしていた。 そして、実際、令和5(2023)年度の調査・研究は、ほぼその計画に沿った形で実行することができたのである。海外での遺物資料調査・民族調査の対象地の一つとして想定していた中国に行くことができなかったことだけがマイナスで、それ以外の研究計画は当初予定どおりかプラスアルファの進展が得られた。本研究費で導入したLiDARスキャナーも、遺物資料調査・民族調査の両方で有効であることを確認し、国内外で多くの三次元データを取得することに成功した。 そもそも文系の新規研究では、1年で複数の研究成果を発表することは難しいと考えていたが、2名による査読がある『金沢大学資料館紀要』に平安時代末の生涯観に関わる遺物についての所見を出すことができ、またタイ北部での民族調査の成果を組み込んだ講演も行うことができた。さらに、年度をまたぐ形での公開予定になってしまったが、別の学術誌に寄稿した成果論文があり、研究発信の面でも順調な進捗状況と言えよう。 このような状況を自己評価すれば、「おおむね順調に進展している。」ということになる。このまま次年度に上手くつながることが見込まれ、最終年度でもある令和6(2024)年度末には目的達成が大いに期待できる。
|
今後の研究の推進方策 |
2年目であり、最終年度である令和6(2024)年度は、前年度の調査成果を踏まえた上で、さらなる①遺物資料調査と②民俗調査・民族調査を実施し、年度後半にそれらの成果を整理・統合して、民俗・民族考古学視点からの生涯学研究の結論をまとめる。 初年度である令和5(2023)年度がほぼ順調に当初計画通りの進展となったため、令和6年度についても基本的な計画変更はなしで調査・研究を進めることにしたい。 ただ、順調とは言っても、東アジア・東南アジアに生きた各地域・各時代の人々の生涯観に到達するまでにはまだデータが足りないため、令和6年度も10月頃までは国内外の各所で遺物資料調査と民俗調査・民族調査を実施し、特に大学の担当授業のない8月と9月は重点的な調査実施期間とする。海外調査については引き続きタイ北部山地民の民族調査を第一に考えているが(それに加えて台湾など)、もし渡航制限が緩和されて中国に行きやすくなった場合には、そちらの調査(中国大陸での遺物資料調査および民族調査)に力を入れたい。また、各種調査を実施しながら、同時並行で論文や口頭発表による成果発信にも努める。 そして、令和6年度後半は、上述の通り各種調査の成果を整理・統合する期間とする。年度前半の状況によっては補足的な短期調査を実施する可能性があるが、基本的には1年半分の調査データに基づいて過去の人々の生涯を復元することに集中する。そして、各時代の人々の生涯がどのようなものであったかを民俗・民族考古学的視点で考察して、そこから浮かび上がる生涯観を現代の生涯観と比較する。その上で、人間の生涯観がどのような変遷を遂げて来たのかを社会的・文化的に解明するという本研究の目的達成に結びつけるのである。 このように進行すれば、本研究は無事ゴールにたどり着き、「生涯学」にも少なからず寄与することができるものとなるはずである。
|