研究領域 | 生涯学の創出-超高齢社会における発達・加齢観の刷新 |
研究課題/領域番号 |
23H03899
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅰ)
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研究機関 | 国際ファッション専門職大学 |
研究代表者 |
丹羽 朋子 国際ファッション専門職大学, 国際ファッション学部, 准教授 (10753486)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
2024年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | 文化人類学 / 職人仕事 / 自然資源 / 循環型社会 / 生涯学 / ものづくり文化 / 記録映像アーカイブ / 民藝 / 染織技術 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、染織業を主とする国内外の「職人仕事」の人類学的研究を通じ、高度なテクノロジー社会や持続可能性の危機に直面する現代世界で、人が「手で作ること」や「手間ひまかけて技術を習得し、心身を成熟させる経験」がいかなる意味をもつか、そこに見出される新たな人間観や労働観等を考察することを目的とする。人・モノ・環境等の多様な行為主体の「ライフサイクル」 がもつれ合い、連環するプロセスを焦点化する脱人間中心主義的な研究視角をもって、ものづくり現場のフィールドワークと過去の日欧の職人仕事に関する文字・映像資料の分析とを合わせ、通時的・通文化的な比較研究を行う。
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研究実績の概要 |
初年度は代表者が主に次の3つのテーマ・対象に対する調査研究やアウトリーチ活動を行うとともに、研究協力者と連携して2回の公開研究会を開催した。調査研究については第一に、1950-90年代にドイツで制作された映像アーカイブ「エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ」に収録されたアジア・オセアニア・ヨーロッパ地域の染織や植物素材を用いたものづくり文化の記録映像を調査し、その成果をもとに関連技術の専門家と協業して実際に素材を用い、当該技術を再現するワークショップや、それらのリサーチ・プロセスも含めて当該映像アーカイブを紹介する展覧会《20世紀の映像百科事典をひらく 映像のフィールドワーク展 vol.2ひもをうむ、あむ、くむ、むすぶ》展(2023.7.25-10.22、生活工房ギャラリー)を実施し、関連企画として2つの講演会や、日本と海外の比較文化的視点から染織工芸に関する記録映画の上映会も開催した。第二に、ものづくりや手仕事を支える思想として、日本各地の風土に根差した工芸文化や職人仕事の形成に多大な影響を及ぼした「民藝運動」の現代的継承やグローバルな展開に着目し、文献調査と合わせて国内の民藝産地および中国安徽省・陝西省で職人の技術継承やその記録・現代デザインとの融合等を図る多様なプロジェクトの現地調査を行い、調査結果を学会等で発表した。第三に、ものづくりをめぐる技術や文化等を脱人間中心主義的な視座で捉えるための文化人類学の方法論や先行研究等の文献調査に取り組み、その成果の一部を共著の学術書籍として公開した。加えて「ものづくりと産地をめぐる研究・座談会」と題した公開研究会シリーズを始動し、本年度は日本の繊維産地や養蚕などに関する研究発表の場を設け、染織・工芸技術やファッション等を専門とする研究者や大学院生、産地の生産者やデザイナーなど多様な参加者を交えて議論を深めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初より計画していた「エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ」のものづくり映像に関するワークショップ形式を活用したリサーチおよびアウトリーチとしての展覧会については、多くの研究者や実践者の協力を得て制作を進める過程で、日本国内の植物素材を用いたものづくりの実践者や記録映画に関する講演会なども追加され、結果的に比較文化的視点をもつ調査研究へと発展させることができ、参加者・来場者からも好評であった。また、現代のものづくり文化・職人仕事に関する調査研究に関しては、日本の職人技術に関する文献調査・現地調査を進める過程で、柳宗悦らが提起・実践した「民藝」の概念や運動の重要性が浮上し、その現代的な展開として中華圏の現代工芸の保護・継承活動における当該概念・運動の影響へと調査対象を広げた結果、中国での現地調査とその成果公開につながった。このようなアジア圏に関する調査を追加する等の研究の進展に伴い、当初は初年度に計画していたヨーロッパでの現地調査が本年度は実施できなかったため、次年度に実施する。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、初年度の調査研究で得られた知見の中から、次の3つの対象・テーマに焦点を当てて研究を進展させる。第一は、日本国内の染織産地等で進行しつつある女性の職人仕事の現代的状況(異業種からの参入や家庭との両立を図る働き方や技術取得の仕組みの改善等)に関する調査である。第二に、自然素材の中でも特に動物由来の素材に着目し、人と動物の複雑な関係を包含するものづくり文化・技術の調査研究に着手する。第三に、ドイツ等のヨーロッパのものづくり文化や職人仕事に関するリサーチを進め、日本・中国との比較研究を行う。加えてこれら3つのテーマについては、「ものづくりと産地をめぐる研究・座談会」を継続的に開催して関連する研究者・実践者による発表の機会を設け、本公開研究会での議論と、代表者による調査研究とを往還させながら、本研究全体にとっての理論面や比較研究的視点での補強を図る。これらの調査研究と並行して、初年度の調査研究の成果として、《映像のフィールドワーク展 vol.2ひもをうむ、あむ、くむ、むすぶ》展の報告書、ものづくりの人類学の方法論や民族誌に関する文献調査や、「民藝」の思想・運動の国際的展開に関する調査を論文にまとめ、広く公開する計画である。
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