研究領域 | 土器を掘る:22世紀型考古資料学の構築と社会実装をめざした技術開発型研究 |
研究課題/領域番号 |
23H03910
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅰ)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金崎 由布子 東京大学, 総合研究博物館, 助教 (10908297)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 高精度編年 / ベイズモデリング / 土器編年 / ベイズ分析 / 縄文時代 / アンデス形成期 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は「考古学的アプローチと年代学的アプローチとの連携から、どのようにして、人間の一世代以下に迫る解像度での高精度編年を構築することが可能となるか」という問いを設定し、高精度年代測定と精緻な土器編年を組み合わせた“二十二世紀型”の編年構築方法を樹立することを目的として研究を行う。従来の研究では、特に精緻な相対編年を有する地域・時代の研究において、高精度年代測定の持つポテンシャルが生かされておらず、両者が乖離している状況にあった。この状況を打破し、今後の研究の新たな基盤となるような編年を構築するため、本研究ではアンデスと日本の二地域を事例とし、型式編年と年代測定とを発展的に統合する研究を行う。
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研究実績の概要 |
本研究は、「考古学的アプローチと年代学的アプローチとの連携から、どのようにして、人間の一世代以下に迫る解像度での高精度編年を構築することが可能となるか」を研究課題の核心をなす問いとして設定し、高精度年代測定と精緻な土器編年を組み合わせた“二十二世紀型”の編年構築方法を樹立することを目的として研究を行う。そのために、筆者が長年取り組んできたアンデス文明形成期の事例と、型式編年が特に発達した縄文時代、関東地方の事例において研究を実施した。 2023年度は、アンデス形成期と縄文時代の関東地方それぞれについて年代解析を行った。前者では、主な研究対象となるワヌコ盆地について追加の年代測定を実施した。後者では、専門家と連携し、これまで集積された最新の年代測定データをもとに、データの精査を行いつつ、各細分時期の年代推定を行なった。その結果、型式編年の細分化が特に進んだ時代・地域では、一世代以下の精度での年代推定が可能になることが検証できた。 また、両者の比較により、一世代以下の精度での年代推定を行う際には、 百年から数百年程度の年代幅を持つ編年での年代推定では見出せなかった問題点が生じることも新たに明らかになった。このことは、縄文時代の関東地方のような事例では、従来の方法によるベイズモデルの適用では、一部の時期について適切な年代推定が行えない可能性を示唆している。本研究で見出された課題を解決するために、新たなモデル構築を進めていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、当初の計画以上に進展していると言える。本研究では、(1)土器型式編年と炭素年代測定値の関係性のモデル化、(2)“二十二世紀型”編年の方法論の構築という二つの段階からなる調査研究を計画していた。このうち(1)について、縄文時代の関東地方の事例をもとに、これまでベイズ年代モデリングで考慮されてこなかった型式編年と年代データとのズレをモデル化することに成功した。この成果により、一世代以下の精度で相対編年が構築されている地域・時代について、より適切なベイズモデルを構築することが可能となった。このことは、(2)の“二十二世紀型”編年の方法論の構築に向けた大きな前進である。 また、調査研究の進捗は順調であり、上記の成果の発表に向けた準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度も、アンデス形成期および縄文時代の事例を中心として年代解析を実施する。2023年度の解析の結果見えてきた課題を踏まえ、モデルの精度を高めていくとともに、構築したモデルが同様に高精度の相対編年が構築されている様々な地域・時期についても適用可能かどうかを検証していく。そのために、現在主に解析を進めている関東地方の縄文時代中期以外の事例についても、専門家と連携し、できる限り解析を行なっていく。また、前年度に引き続き、高精度編年モデルを構築する上での年代測定データが不足している時期については、できる限り年代測定を追加実施する。 これらの事例の比較検討を行なっていくとともに、理論考古学の分野で議論が進んでいる「考古学と時間性」に関する理解を深め、“二十二世紀型”の編年構築の理論化を進める。
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