研究領域 | イスラーム的コネクティビティにみる信頼構築:世界の分断をのりこえる戦略知の創造 |
研究課題/領域番号 |
23H03932
|
研究種目 |
学術変革領域研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅰ)
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
KHASHAN AMMAR 立命館大学, 立命館アジア・日本研究機構, 准教授 (70814888)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | イスラーム信頼 / イスラーム福祉制度 / イスラーム金融 / ワファー(契約の誠実履行) / 互助 / イスラーム世界 / イスラーム法 / タバッルアート(寄付性の契約) |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、イスラーム経済の鍵概念「ワファー=契約の誠実履行」をムスリム社会・経済の「互助の信頼性」源泉として、古典期と現代経済活動の展開を検討する。イスラーム法学の史資料を使った伝統的概念解析、現代の伝統再活性化検証、ムアーワダート取引(売買性の取引)とタバッルアート取引(寄付性がある取引)の事例研究、最新フィンテックによるデジタル化でのイスラーム的信頼性分析を行い、「イスラームの互助の信頼学」確立を目指す。
|
研究実績の概要 |
本研究課題のこれまでの進捗と実績は以下の通りである。 まず、理論的研究および事例研究として、アラビア語古典のイスラーム法学史資料を用いて、「ワファー(契約の誠実履行)」の概念とその構成を明らかにすることを目指した。特に、クルアーンとハディースを用いて、初期イスラームにおけるワファーの理念とその社会的意義、および初期イスラームの経済構想におけるワファーの概念を分析した。これにより、ワファーの概念と関連する諸要素も解明しながら、ムアーワダート取引(売買性の取引)およびタバッルアート取引(寄付性のある取引)について事例研究を分析し、特に、「タバッルアート(寄付性の契約)」を中心に、初期イスラームにおけるワファーの実態を考察してきた。 学際的研究の面では、最近コロナの制約が緩和された上、国内外の研究協力者の協力を得ることができた。昨年度では、特に東南アジアの非アラビア語イスラーム圏におけるワファー(契約の誠実履行)の社会・経済的実態を調査した。さらに、デジタル化社会における人間存在をめぐる現代思想の立場や、イスラーム金融におけるワファーの連関性についての知見を得ることもできた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1年度として、全体的に順調に進展していることを報告する。その理由として、理論的な面では、「ワファー(契約の誠実履行)」の概念とその構成を明確にした。また、地域の事例から特に東南アジアの実態を考察してきた。さらに、事例研究では国際ネットワークを活用し、各国の知見を収集して議論を深めた。国内外での研究交流も進展して、若手研究者の協力者による積極的な参加と研究代表者による研究報告及び成果発表を展開することができた。したがって、全体的に評価すると当初の計画の通りおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は、研究の第2年目・最終年にあたり、以下のように研究活動を展開する。 (1)理論研究:1年目に得たワファーに関する知見を踏まえ、イスラーム法の古典的資料の解析をさらに深化させる。特に、イスラーム経済および金融分野でワファーがどのように位置づけられ、現実の契約関係の中でいかに扱われているかを考察する。国際的な事例研究から得られた知見を基に、古典的な理解と現代的な事例の関連性を詳細に検証する。また、理論面では「ヌズム論」の適用について、国際的な研究者との意見交換を予定している。 (2)学際的研究:デジタル化社会におけるワファーの役割とその意義について探求する。デジタル化がもたらす利便性と、その一方で人間関係における信頼に与える影響(負の面を含む)に焦点を当てる。このテーマに関して、現代哲学や国際政治経済学を専門とする研究者との積極的な意見交換を通じ、グローバルな視野からの考察をおこなう。現代のイスラーム金融におけるワファー関連の課題に対する解決策を、具体的な事例研究を基に深める。 (3)事例研究:これまでの研究で取り扱いが少なかった「タバッルアート(寄付性の契約)」の事例を更に収集し、その中でのワファーに関する分析を進める。また、最新技術やデジタル社会が契約の実行にどのような影響を与えているか、実際の課題についても検討を加える。 また、課題の最終年に当たり、成果のまとめ及び公開として、国内の学会で成果を発表して、研究論文の投稿を準備する。また、国際ワークショップを開催して、その成果を英語の冊子として刊行すべく準備を進めている。
|