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有機太陽電池のバルクヘテロ接合界面構造と分子四重極のエキシトン解離過程への影響

公募研究

研究領域動的エキシトンの学理構築と機能開拓
研究課題/領域番号 23H03939
研究種目

学術変革領域研究(A)

配分区分補助金
審査区分 学術変革領域研究区分(Ⅱ)
研究機関千葉大学

研究代表者

吉田 弘幸  千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (00283664)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2024年度)
配分額 *注記
7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
キーワード有機薄膜太陽電池 / 四重極 / 電子構造 / 低エネルギー逆光電子分光 / 有機太陽電池 / 静電エネルギー / バルクヘテロ接合 / ドナー・アクセプター界面 / 非フラーレンアクセプター / 界面構造
研究開始時の研究の概要

有機太陽電池では、ドナーとアクセプターの界面を使って励起子を解離して発電する。近年開発された非フラーレンアクセプターでは、励起子の解離に必要なエネルギーが極めて小さいことで、高い太陽電池性能が得られている。本研究は、非フラーレンアクセプター分子のもつ大きな四重極が励起子解離を容易にしているとの仮説に基づき、吉田が独自に開発した低エネルギー逆光電子分光法により分子の四重極がつくる静電ポテンシャルを測定し、ドナー・アクセプター界面構造との相関を明らかにする。これにより、上記の仮説を実証し、高効率有機太陽電池の設計指針を提案する。

研究実績の概要

有機太陽電池では、非フラーレンアクセプターの成功により光電変換効率が20%に迫りつつある。代表者らは、非フラーレンアクセプターの四重極が界面付近に静電ポテンシャルを形成し、電荷分離を促進することを示す間接的な証拠を得てきた。しかし、静電ポテンシャルの空間スケールや静電ポテンシャルと四重極の効果の詳細はまだ分からない。そこで、本研究は、界面構造(分子配向、界面形状)を制御し、静電ポテンシャルとの関係を明らかにする。
静電ポテンシャルの測定方法としては、代表者がこれまでに開発してきた紫外光電子分光法(UPS)と低エネルギー逆光電子分光法(LEIPS)によるイオン化エネルギーと電子親和力を精密測定する方法を用いる。ドナーとアクセプターの混合比や、製膜条件や分子の側鎖を変えた際の電子準位の微小変化を解析することで、薄膜構造と静電ポテンシャルの影響を明らかにしていく。
2023年度は、3つの系を検討した。(1)現在の有機薄膜太陽電池の標準とされるPM6とY6について、混合比と静電エネルギーの関係を測定した。(2)家裕隆教授(大阪大学)のアクセプター(Ph-X、X=H,D,MH)とドナーポリマー(P3HT)を取り上げた。アクセプターの側鎖Xを変えることで表面エネルギーを制御することができ、ドナーとアクセプター界面の構造を制御できる。(3)山田容子教授(京都大学)のドナー(Cn-DPP-BP)とアクセプター(PCBM)について、アルキル鎖長nを変えることで、界面構造を制御できる可能性がある。
どの系についても、ドナーが表面偏析しやすく、混合比が安定しないという課題があり、X線光電子分光法によるドナーとアクセプター比の測定をしながら、構造制御を試みている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現在までの進捗状況の詳細は以下のとおりである。
(1)現在の有機薄膜太陽電池の標準であるPM6とY6について、混合比と静電エネルギーの関係を測定した。ドナー・アクセプター混合溶液での混合比を1:9 から9:1までかえていくと、LUMO準位が連続的に変化することが見いだされた。一方で、PM6が表面偏析しやすいことが分かり、XPSによる混合比の決定をすすめている。
(2)家裕隆教授(大阪大学)のアクセプター(Ph-X、X=H,D,MH)とドナーポリマー(P3HT)については、アクセプター、ドナー、混合膜(溶液での混合比1:1)の測定を行った。この結果、Ph-XとPh-Dでは薄膜表面がP3HTで覆われていることが分かった。スピンコートで製膜後に膜をはがして裏返すことを試みている。一方、Ph-MHについては、ドナーとアクセプターが観測され、-Hや-Dとは薄膜構造が異なることがわかった。
(3)山田容子教授(京都大学)のドナー(Cn-DPP-BP)とアクセプター(PCBM)について。Cn-DPP-BPは、前駆体を溶液法で製膜後に加熱転換するポルフィリン誘導体である。加熱する際に表面偏析し薄膜の凹凸ができるため、UPS・LEIPSによる測定では試料帯電しやすいことが分かってきた。
(4)UPS/LEIPS測定に加えて、XPSスペクトルを多変量解析することで、電子準位を精密決定する方法の開発を進めている。多変量解析の方法としては、Principal Component Analysis、Classical Least Squares、Target Factor Analysisを取り上げた。どの方法も、スペクトルの微小な変化を効率的に検出することができる。一方で、測定条件の変化に対しても敏感であるため、実験方法の見直しを同時に進めている。
いる。

今後の研究の推進方策

(1)PM6とY6については、UPSによるHOMO準位の測定を進めていく。LEIPSによるLUMO準位の測定結果と合わせることで、静電エネルギーとドナー・アクセプターの混合比の関係を明らかにしていく。
(2)アクセプター(Ph-X、X=H,D,MH)とドナーポリマー(P3HT)については、製膜法の確立を急ぐ。製膜した混合膜をXPSによりドナーとアクセプターの混合比を決定することで、適切な混合比の薄膜が作製できるようにする。その後、UPS・LEIPSによる測定を進めていく。
(3)多変量解析については、PM6:Y6混合系の他、3元系への適用を検討していく。

報告書

(1件)
  • 2023 実績報告書
  • 研究成果

    (5件)

すべて 2024 2023

すべて 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [学会発表] Direct observation of the energy band structure of the super atom molecular orbital in solid phase C602024

    • 著者名/発表者名
      Daichi Homma, Susumu Yanagisawa, Hiroyuki Yoshida
    • 学会等名
      DPG spring meeting2024
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 高真空ケルビンプローブを用いた有機半導体のギャップ内準位測定2024

    • 著者名/発表者名
      古川 侑生、吉田 弘幸
    • 学会等名
      第71回 応用物理春季学術講演会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] Precise Measurement of Exciton Binding Energies in Organic Semiconductors: Implications for High-Performance Organic Solar Cells2023

    • 著者名/発表者名
      Hiroyuki Yoshida
    • 学会等名
      NYCU-DyEx Bilateral Symposium on Light Energy Conversion The 7th International Symposium on Dynamic Exciton in Taiwan
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] X線光電子分光法とCLS回帰法による電子準位のエネルギーシフト解析の新手法2023

    • 著者名/発表者名
      三浦真琴、中野恭兵、但馬敬介、山内光陽、山田容子、吉田弘幸
    • 学会等名
      第84回応用物理学会秋季学術講演会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] X線光電子分光法とCLS回帰法による電子準位のエネルギーシフト解析の新手法2023

    • 著者名/発表者名
      三浦真琴, 中野恭兵, 但馬敬介, 山内光陽, 山田容子, 吉田弘幸
    • 学会等名
      第18回有機デバイス・物性院生研究会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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