研究領域 | 動的エキシトンの学理構築と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
23H03945
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
生駒 忠昭 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10212804)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | 三重項スピン副準位 / スピン動力学 / 熱活性遅延蛍光 / 巨大アセン / 電子スピン共鳴 / スピンダイナミクス / ゼロ磁場相互作用 / ジケトン脱離反応 / 三重項エキシトン / スピン副準位ダイナミクス |
研究開始時の研究の概要 |
有機半導体におけるエキシトン動力学の解明は、生活を支える有機エレクトロニクスの進歩と地球規模の環境エネルギー問題を解決するうえで重要な学術的課題である。しかしながら、無機半導体に比べて有機半導体は多様な分子やイオンで構成される不均一な凝集構造をもつことから、エキシトンが複雑な運動をする。複雑なエキシトン挙動を明らかにするためには、エキシトンの動的挙動の精密な計測と解析が求められる。そこで本研究では、熱活性遅延蛍光ドナー-アクセプター分子と前駆体法によって創り出す高次ポリアセンのエキシトンダイナミクスを調べ、有機発光素子や有機太陽電池の性能向上に貢献する。
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研究実績の概要 |
光励起用レーザーをアップグレードした。また、現有する電子スピン共鳴(ESR)装置の傍に発光検出システムを新たに構築し、ESR装置と同期させ、時間分解ESR実験や光検出ESR実験を実施できる測定装置を立ち上げる。 3つの電子供与性アクリダン基が電子受容性トリアジンに結合した分子(3ACR-TRZ)について研究した。3ACR-TRZ はC3回転対称性のある分子構造を有しており、比較的分子サイズが大きい熱活性遅延蛍光分子である。3ACR-TRZの時間分解ESR実験を行ったところ、スピン分極した励起三重項状態を観測することができた。スペクトルの極性から、スピン軌道相互作用だけでなく超微細相互作用に由来する一重項励起子-三重項励起子スピン変換があることが分かった。一方、光検出ESR実験も行ったが、有意な信号をえることができなかった。 また、有機半導体材料における中核的化合物であるポリアセンを生成する光前駆体(アセンジケトン)の光脱離反応について調べる目的で、可溶性ヘプタセンジケントンの時間分解ESR実験も行った。凍結捕捉法を用いても、ヘプタセンジケントンの常磁性光反応中間体を検出することができなかった。一方、ヘプタセンジケントンの反応性が著しく溶媒に依存することが分かった。ジケトン脱離反応を示すマトリクスにおいては二量化反応の存在も示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
時間分解型光検出ESR装置を立ち上げたが、光検出ESR信号を観測することができなかった。原因は、おそらく現有するマイクロ波発生器のパワー不足と思われる。また、2024年1月1日の能登沖地震の影響で、レーザーが故障したため、実験を中止せざるを得なかったことも遅滞の原因である。
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今後の研究の推進方策 |
1. 光検出ESRが報告されているナノダイアモンド中のNVセンターを用いて、自作の光検出ESR装置の最適化を行う。 2. 熱活性遅延蛍光分子の研究に関しては、室温固体マトリクスを用いて逆項間交差のスピン副準位ダイナミクスを研究する。 3. ヘプタセンジケントンがジケトン脱離反応だけを起こすマトリクスを探索し、巨大アセンの励起状態を調べる。
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