研究領域 | 動的エキシトンの学理構築と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
23H03947
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
福井 識人 名古屋大学, 工学研究科, 講師 (70823277)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | 動的エキシトン / 可溶性前駆体 / ペリレンビスイミド / n型有機半導体 / 非フラーレン系アクセプター / n型半導体 |
研究開始時の研究の概要 |
有機薄膜太陽電池の光電変換効率の向上の鍵は、適切な新規非フラーレン系n型有機半導体の開発にかかっている。従来の非フラーレン系n型有機半導体は非平面構造を有し、固体中で凝集しづらいため、ドナー材料と分子レベルで均質に混合する。これが優れた変換効率の鍵である。しかし、凝集の抑制は分子間での効率的な電荷移動をも抑制し、電荷の再結合を招きやすいため、変換効率の向上には限界があると言わざるをえない。本研究ではこのトレードオフの解消を、代表者が独自に開発した硫黄挿入型ペリレンビスイミドの特異な反応性を活かすことで達成することを目指す。
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研究実績の概要 |
有機薄膜太陽電池の光電変換効率の向上の鍵は、適切な新規非フラーレン系n型有機半導体の開発にかかっている。従来の非フラーレン系n型有機半導体は非平面構造を有し、固体中で凝集しづらいため、ドナー材料と分子レベルで均質に混合する。これが優れた変換効率の鍵である。しかし、凝集の抑制は分子間での効率的な電荷移動をも抑制し、電荷の再結合を招きやすいため、変換効率の向上には限界があると言わざるをえない。本研究ではこのトレードオフの解消を、代表者が独自に開発した硫黄挿入型ペリレンビスイミドの特異な反応性を活かすことで達成することを目指した。 硫黄挿入型ペリレンビスイミドとは、代表的なn型有機半導体分子であるペリレンビスイミドの骨格内部に硫黄を挿入した分子である。この硫黄挿入型ペリレンビスイミドは非平面構造を有するため、ペリレンビスイミドと比べて格段に高い溶解性を示す。さらに、硫黄挿入型ペリレンビスイミドを加熱すると、内部の硫黄が脱離し、ペリレンビスイミドへと変化する。本研究で代表者は、硫黄挿入型ペリレンビスイミドを各種p型半導体材料と混合させ、その後加熱を行うと、狙い通り硫黄脱離反応が進行し、n型半導体とp型半導体からなる混合膜が得られることを明らかにした。また、この膜が太陽電池としても駆動することを明らかにした。次年度では素子の最適化と、薄膜に対する解析を進めることで、変換効率の向上と学理構築を目指す。 また、上記の研究課題とは別に、領域内共同研究として、新たに創出した含窒素π共役分子であるフェナジンビスイミドの電子伝達特性の評価、ならびに、屈曲型ペリレンビスイミドの時間分解ESR測定による励起状態挙動の調査を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代表者は、硫黄挿入型ペリレンビスイミドを各種p型半導体材料と混合させ、その後加熱を行うと、狙い通り硫黄脱離反応が進行し、n型半導体とp型半導体からなる混合膜が得られることを明らかにした。また、この膜が太陽電池としても駆動することを明らかにした。しかし、変換効率は1%を下回っており、改善の余地がある。次年度では素子の最適化と、薄膜に対する解析を進めることで、変換効率の向上と学理構築を目指す。 また、上記の研究課題とは別に、領域内共同研究として、新たに創出した含窒素π共役分子であるフェナジンビスイミドの電子伝達特性の評価、ならびに、屈曲型ペリレンビスイミドの時間分解ESR測定による励起状態挙動の調査を行なった。これらはいずれも現在論文を執筆中である。 以上のことから本研究は「おおむね順調に進展している。」と結論付ける。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き素子の最適化を進める。ペリレンビスイミドの固体中での分子配列はイミド窒素上の置換基に依存する。現在のところはオクチル基を置換した類縁体のみしか検討していないが、今年度ではメチル基からデシル基までの長さの異なる第一級アルキル基をはじめとして、他に2-エチルヘキシル基、3-ペンチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基ならびに2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基を有する分子を用いた際の挙動を調査する。また、現段階では熱による変換のみしか検討していないが、アニーリング効果によって望まない相分離を引き起こす可能性があるため、光変換による硫黄脱離も検討する。これによりp型半導体分子とn型半導体分子が均質に混ざり合った薄膜が得られることで優れた光電変換効率が実現できると期待される。 混合膜が得られた後は、AFM観察、TEM観察、X線回折測定ならびに紫外可視吸収分光による解析を実施し、イミド窒素上の置換基の違いが凝集度と分子配列に及ぼす影響を評価する。さらに、得られた素子の光電変換特性を測定することで、優れた移動度を達成する条件(変換時の刺激 ・置換基・ドナーとアクセプターの混合比率)を解明する。
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