研究領域 | 動的エキシトンの学理構築と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
23H03950
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
秋山 みどり 京都大学, 工学研究科, 助教 (50807055)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | cubane / electron acceptor / fluorine / dynamic exiton / dynamic exciton |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では新たな電子受容性分子として開発された全フッ素化キュバンを用いた動的エキシトン制御を最終的な目標と定め,全フッ素化キュバンを電子受容性分子とした分子間・分子内光誘起電子移動について調査する。本研究は,現在国内外で精力的に進められているドナー・アクセプター相互作用に関する研究の対象を拡張し,学理の幅を広げるものである。
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研究実績の概要 |
箱型分子であるキュバンが完全にフッ素化された全フッ素化キュバンは,箱の内部にC-F結合のσ*軌道が集合して低エネルギー準位のLUMOを形 成し,電子受容性を示すと予測されていた。申請者は科研費(若手研究)課題において全フッ素化キュバンを初めて合成し,電子受容性の証明 および全フッ素化キュバンラジカルアニオン種の観測に成功した(Science, 2022)。本研究では全フッ素化キュバンを電子受容性分子(アク セプター)として用いた動的エキシトンの学理の構築を目標としている。具体的には全フッ素化キュバンを用いた分子間および分子内における光誘 起電子移動について検討し,電子供与性分子(ドナー)との相互作用を対象として研究を行う。古典的な静的視点と近年注目されている動的視点の双方から電荷移動挙動を調べ,従来のπ共役系電子受容性分子と比較することで,当該研究領域の目標である動的エキシトンへの理解に貢献する。 本年度は分子間の光誘起電子移動を対象として,電子移動が起こるかどうかを確かめるとともに,適切な電子供与性分子を選定することを計画し,実験を行った。光励起状態の酸化電位が全フッ素化キュバンの還元電位よりも高いこと,全フッ素化キュバンの直接励起を抑制するために吸収波長が全フッ素化キュバンより長波長域にあることを条件に,フルオレンおよび各種芳香族アミンを電子供与性分子として利用し,混合溶液の過渡吸収測定を行った。しかし,分子間の光有機電子移動は観測できなかった。これは,全フッ素化キュバンの溶解性の低さより,濃度を稼げず,電子供与性分子の励起状態寿命中に電子移動を起こすことができなかったことが原因と考えられる。今後は,電子供与性分子と全フッ素化キュバンを連結した分子を合成し,分子内電子移動を対象にする計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は分子間の光誘起電子移動を対象として,電子移動が起こるかどうかを確かめるとともに,適切な電子供与性分子を選定することを想定していた。フルオレンおよび各種芳香族アミンを用い,混合溶液の過渡吸収測定を行ったが,期待に反して分子間の光有機電子移動は観測できなかった。これは,全フッ素化キュバンの溶解性の低さより,濃度を稼げず,フルオレンの励起状態寿命中に電子移動を起こすことができなかったことが原因と考えられる。 一方で,全フッ素化三次元分子を用いた研究について,A03班の梶グループとの共同研究は予想以上に進展した。全フッ素化アダマンチル基を有する熱活性遅延蛍光材料を合成し,その特性評価を行った。この成果を学術誌に発表した(Bull. Chem. Soc. Jpn. 2024, 97, uoae025.)。
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今後の研究の推進方策 |
分子間光誘起電子移動の観測ができなかった原因として,①分子の溶解性が悪いことによって濃度が低く,信号強度が弱かったこと②濃度が低いため,電子供与性分子と全フッ素化キュバンの距離が遠いこと の2つが考えられる。これらの問題を解決するために,今後は,分子内光誘起電子移動を対象とする。電子供与性分子と全フッ素化キュバンを共有結合で連結した分子を合成し,過渡吸収測定を行って電子移動の可否を明らかにする。この戦略をとれば①全フッ素化キュバンに置換基をつけることで溶解度が上がること,②連結分子とすることで,電子供与性分子と全フッ素化キュバンの距離が近くに固定されること が期待できる。
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