研究領域 | 次世代アストロケミストリー:素過程理解に基づく学理の再構築 |
研究課題/領域番号 |
23H03990
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
間嶋 拓也 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50515038)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 星間分子 / MeV重イオン / 宇宙線 / 負イオン / イオン-分子反応 / イオン分子反応 |
研究開始時の研究の概要 |
宇宙での分子進化に宇宙線が果たす役割のうち、重イオンの効果については検証が十分ではない。特に、MeVオーダーの運動エネルギーをもつ重イオンは高LET(線エネルギー付与)放射線とされ、標的分子に膨大なエネルギーを付与する。これに伴い、陽子や電子、X線とは異なる多様でユニークな分子反応を引き起こすことが考えられるが、複雑な反応であるため未だにその詳細はブラックボックスと言える。本研究では、気相および凝縮相表面の有機分子にMeV重イオンを衝突させ、生成される反応生成物イオンの分析を行う。特に申請者が最近見いだした新奇な負イオン生成過程に着目して、星間化学におけるMeV重イオンの役割を検証する。
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研究実績の概要 |
本研究では、気相および凝縮相表面でのMeV重イオンと有機分子の衝突実験を行い、主に、星間化学に関連する有機分子からの負イオン生成について実験的な研究を行った。気相分子に対する実験は、申請者の所属部局で運用している1.7MVタンデム型コッククロフト・ウォルトン静電加速器を用いて行った。加速器から引き出したMeV重イオンを気相の有機分子に衝突させ、生成される解離イオンを飛行時間測定法により質量分析した。水やメタノール、エタノールなどの液体試料は蒸気圧が高いため、室温で蒸発させて十分な密度の気相標的が得られた。入射イオンには炭素イオン、さら比較のため陽子を用いて実験を行った。エタノール以上の多原子分子では、イオン化に伴う熱的な遅延解離の経理を新たに多数発見し、量子化学計算による解離経路の検討も進めた。また、さらに詳細な解離過程の解明を目指して、現在構築中の新たな運動量画像分光装置を用いた解離ダイナミクスの測定も進めた。微小液滴を用いた実験では、同じく申請者の所属部局で運用している2MVタンデム型ペレトロン加速器を用いて行った。加速器から引き出した重イオンを真空中の微小液滴に衝突させ、表面から放出される正負の二次イオンの質量分析を行った。入射イオンとしては炭素イオンを用いた。水・メタノールの混合溶液に対する測定を進め、その濃度依存性を測定した。その結果、先行して行われた純メタノール液滴の測定では観測されなかった新たな反応経路が観測された。並行して薄膜状の氷標的を用いた実験も進めた。液体窒素温度に冷却した基板上にメタノール蒸気を吹き付けて清浄表面を準備し、放出された二次イオンの飛行時間質量分析を行った。その結果,放出されるイオン種は概ね、微小液滴の結果と類似していることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
気相分子、微小液滴、氷表面のそれぞれの標的に対する実験で、概ね、予定していた実験項目を進めることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
気相分子に対する実験では測定をさらに高度化させ、重イオン衝突に伴う解離イオン生成ダイナミクスの特徴を明らかにする。また微小液滴に対する実験でも3次元画像運動量分光を導入し、表面からの複雑分子イオンの放出についての測定を進める。並行して、薄膜状の氷標的を用いた実験をさらに進め、液体試料との定量的な比較を行うとともに、星間塵表面に関連する低温の標的分子に対する測定を行う。
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