研究領域 | 次世代アストロケミストリー:素過程理解に基づく学理の再構築 |
研究課題/領域番号 |
23H03994
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
水瀬 賢太 北里大学, 理学部, 講師 (70613157)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 分子分光学 / 分子動画 / レーザー化学 / フェムト秒化学 / 分子間相互作用 / 波動関数 / 冷却イオントラップ / イオンイメージング / 分子クラスター / クラスター化学 |
研究開始時の研究の概要 |
星間化学進化においてイオン種が及ぼす強い相互作用や高い反応性は重要な役割を担っている。しかし、相互作用の精密決定や星間イオン種の発見は、実験室におけるイオン種の高分解能分光の困難さによって滞っている。本研究では、応募者独自の汎用・高感度・広帯域・高分解能分光法を開発、拡張し、広範な分子イオンや分子イオン錯体の高分解能分光実験によって星間イオン化学の発展に寄与することを目的とする。手法としては、対象分子イオンの回転運動や振動運動を分子動画として撮影し、その画像の時間変化から振動回転の周波数スペクトルを得るものである。手法の最適化を行い、適用可能範囲と分解能を向上させ、応用展開を行う。
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研究実績の概要 |
本研究は、研究代表者独自の汎用・高感度・広帯域・高分解能分光法を開発、拡張し、広範な分子種の高分解能分光実験によって星間化学の発展に寄与することを目的としている。前期公募研究において、分子の動画観測に基づく高感度フーリエ変換分光を開発し、エチレン多量体などの回転分光に応用してきた。その周波数帯は100GHz以下の低周波数領域に限られてきた。近年のALMA望遠鏡の技術発展に伴い、THz領域の分光研究も求められている。今年度の研究では、周波数分解能を保ったまた時間分解能をあげることを試み、分子クラスターのTHzスペクトル、つまりvan der Waalsモード(分子間振動)の高分解能分光を行った。具体的には、光源の時間分解能を分散補償光学系により向上させ、50fs程度とした。その上で、ナノ秒以上の遅延時間まで分子のダイナミクスを追跡し、その空間パラメータをフーリエ変換することで広帯域高分解能分光を達成した。初めの対象として、アルゴン2量体や窒素ーアルゴン系という、扱いやすい気体サンプルを用いて手法を最適化した。両者のサンプルについて、100GHz以下の回転スペクトルと、1THz付近の分子間振動スペクトルを1回の実験で得ることに成功している。本手法では、周波数情報のみならず、遷移前後の量子状態に対応する波動関数形を可視化できる。この手法により、振動波動関数形を可視化することにも成功した。さらに、関数形に基づいてスペクトルを解析することで、量子数差が4もあるようなピークを帰属することができ、これは強パルスによる多段階励起のためと説明できた。今後は開発した手法を広範な系に適用していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題で開発する分光法について、星間化学に関わる分子間相互作用を直接的に反映する分子間振動の観測を達成できたため。イオン種をはじめ、未測定系への適用が今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
開発した手法を様々な系に適用していくことが研究最終年度の課題である。そのために、サンプル生成の部分で、新規パルスバルブの導入、イオン源やイオン冷却機構の導入を進める。分光法自体にもさらなる改善の余地として、分子振動の全領域に渡るほどの広帯域化や、広帯域化と高分解能化を両立する際に問題となる測定時間の増加への対応が考えられる。広帯域化については、フェムト秒パルスの集光による広帯域化と分散補償を組み合わせることで4000cm-1程度までの対応を目指す。測定時間の問題については、検出器の大型化による感度向上に加え、画像データや時系列データの補完を組み合わせた解析手法の開発を進めていく。
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