研究領域 | ダークマターの正体は何か?- 広大なディスカバリースペースの網羅的研究 |
研究課題/領域番号 |
23H04004
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
藤間 崇 金沢大学, GS教育系, 准教授 (60786325)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 暗黒物質 / 暗黒物質の加速機構 / ニュートリノ / EDM / CPの破れ / 相対論的暗黒物質 / 暗黒セクター / 半対消滅 / 真空崩壊 / ステライルニュートリノ / 暗黒物質生成 |
研究開始時の研究の概要 |
これまでの暗黒物質探索の結果から暗黒物質と通常物質の間の相互作用には強い制限が課せられているが、ニュートリノに関しては非常に検出しにくい粒子であることから実験的な制限は比較的緩いのが現状である。本研究の目的はニュートリノとの相互作用を通じて暗黒物質の性質を探ることである。具体的にはステライルニュートリノ暗黒物質残存量の新しい仮定に基づく計算、ステライルニュートリノ媒介による電気双極子モーメントの精密計算、速度の速い暗黒物質に関する研究を行う。さらに当該研究領域において行われるX線観測、CPの破れなどの精密測定結果を本研究へフィードバックすることで暗黒物質研究の推進を図る。
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研究実績の概要 |
ステライルニュートリノ暗黒物質が、初期宇宙において通常の物質粒子とは熱平衡になく、かつ暗黒セクターでは熱平衡にある状況において、その熱的生成を調べた。結合定数に対するユニタリティ、初期宇宙元素合成、ガンマ線等による制限を考慮することで、暗黒物質の残存量を再現可能な質量は100keV-10PeVの範囲に制限され、かつ暗黒物質の残存量を決定される時点での暗黒セクターの温度は、宇宙の温度に対して1/10000-1倍の範囲でなければならないことが分かった。 太陽中心において、ニュートリノを伴う暗黒物質の半対消滅過程に着目し、生成されたニュートリノと相対論的暗黒物質粒子が次世代大型ニュートリノ実験DUNEにおいて同時検出される可能性を調べた。詳細なシミュレーションを行った結果、DUNE実験においてこれらのシグナルが同時に検出されるためには、ターゲット原子核との散乱断面積に対して、強い移行運動量の依存性が必要であることが分かった。また、別の大型ニュートリノ実験ハイパーカミオカンデにおいては、半対消滅により生成されたニュートリノは検出可能であるが、同時に生じる相対論的暗黒物質については、その速度が十分でないことから検出不可能であることが分かった。 さらに相対論的暗黒物質を生成する別な機構として、負のエネルギーを持つファントム粒子を仮定し、真空崩壊から生じる相対論的暗黒物質を直接検出実験を用いて検出する可能性について定量的に調べた。特に、直接検出実験DAMICにおいて、低い反跳エネルギー領域に僅かな超過が報告されており、真空崩壊から生じる相対論的暗黒物質を用いて検出率を適切にフィット可能であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
半対消滅等の非標準的な消滅過程、または真空崩壊から生成される相対論的暗黒物質の検証可能性を研究した。生成された暗黒物質は直接検出実験や、ハイパーカミオカンデやDUNE実験などの大型ニュートリノ検出器において検出が期待される。研究成果は4つの学術論文として出版されている。また、本研究成果を国内や海外での研究会や国際会議において複数回の発表を行った。一方、相対論的暗黒物質の性質については、銀河中心において大量に生成される可能性など、まだ議論されるべき点が多く、今後も継続して詳細な研究が必要である。 加えて、有力な暗黒物質候補となる擬-ディラック型ステライルニュートリノを加えた拡張模型において、荷電レプトンの電気双極子モーメントの計算を現在計算中であり、その成果をまとめて論文を執筆中である。さらに新たな試みとして、非最小な超対称性から導かれる暗黒物質の崩壊により生成されるガンマ線やニュートリノシグナルについて研究も同時に進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
暗黒物質の半対消滅や、暗黒物質粒子3つから2つへの消滅過程などの非標準的な消滅過程により生成される相対論的暗黒物質に関する研究を進める。特に、銀河中心に存在する超巨大ブラックホール付近においては、暗黒物質密度が非常に高くなる可能性が指摘されており、そこで生成される相対論的暗黒物質のフラックス量を計算し、地球において検出がどのくらい期待できるかを評価する。 有力な暗黒物質候補となるステイラルニュートリノと関連して、レプトンセクターにおけるCPの破れについて研究を行う。具体的にはレプトン数がわずかに破れたニュートリノ質量模型において、荷電レプトンの電気双極子モーメントを計算し、現在の実験と比較して予言される値はどの程度であるかを見積る。またレプトン数が大きく破れた模型と比較する。 加えて、南部-ゴールドストーン粒子の超対称パートナーであるゴールドスティーノの崩壊モードとエネルギースペクトルの理論計算を行う。この崩壊により、高エネルギーのガンマ線やニュートリノが生成されると期待され、これらが宇宙線観測に対する示唆を調べる。相互作用の形を明らかにする。
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