研究領域 | 高密度共役の科学:電子共役概念の変革と電子物性をつなぐ |
研究課題/領域番号 |
23H04015
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐々木 孝彦 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (20241565)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | 高密度共役パイ電子 / ランダムネス / 分子性結晶 / ランダムネス効果 / パイ電子機能性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,高密度共役分子性パイ電子系を舞台とした電荷・スピンの秩序形成とその量子的非秩序状態(量子スピン・ダイポール液体,電荷ガラス,バレンスボンドガラス)創成に対するランダムネスの役割に正面から取り組み,巨大な電子応答・非平衡現象の根源となるランダムネスが誘起する新電子機能物性を開拓する.本研究により周期完全系を基本概念とした高密度電子共役系に対してランダムネス導入による未踏機能発現,ランダムネスサイエンス学理形成を目指す.
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研究実績の概要 |
本研究では,高密度パイ電子共役系を舞台とした電荷・スピン秩序形成とその量子的非秩序状態創成に対するランダムネスの役割解明に取り組み,巨大な電子応答・非平衡現象の根源となるランダムネスが誘起する新電子機能物性を開拓し,ランダムネス導入による未踏機能発現,ランダムネスサイエンス学理の形成を目指している. 2023年度は,2022年度に研究代表者のグループが発見したモノマーモット絶縁体(BEDT-TTF)Cu[N(CN)2]2の磁気的性質の解明とそのエックス線照射により導入したランダムネスが磁気状態に及ぼす影響について研究を進めた.(BEDT-TTF)Cu[N(CN)2]2は,BEDT-TTF分子がアニオン分子と1:1の割合となった真性モット絶縁体である.さらにBEDT-TTF分子がダイアモンド構造の位置に配置しているが分子間の異方的結合により1次元的性質を有している特徴がある.この物質の磁気的性質には23Kで非磁性転移が現れることが2022年度の研究で明らかになっていたが,2023年度はその磁気的性質の詳細解明を電子スピン共鳴実験により進めた.その結果,23Kにおける非磁性化は高温常磁性状態からBEDT-TTF分子対によるスピン1重項状態への転移であること,BEDT-TTF分子対の形成には,BEDT-TTF分子の連鎖によるジグザグ1次元チェーン構造が重要であることが分かった.これらの結果を成果論文として発表した. さらに,スピン1重項非磁性状態に対するランダムネス導入の影響をエックス線照射した試料における電子スピン共鳴実験により調べた結果,分子格子構造に影響を与えることは無いほどの少量のランダムネスで非磁性転移が抑制されることが判明した.このことは,ランダムネスがBEDT-TTF分子対の格子構造を単純に変調することにより非磁性化が抑制されることではないことを示唆する結果を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モノマーモット絶縁体の磁気状態の解明などに成果があり,当初予定した計画を実施できている.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に研究を進めたモノマーモット絶縁体(BEDT-TTF)Cu[N(CN)2]2の磁気的性質の解明において,エックス線照射によるランダムネス導入の実験研究を進めているが,このランダムネス導入後の電子スピン共鳴実験,静帯磁率測定実験とその詳細なデータ解析を行う.あわせてランダムネス導入前後の現象変化の説明のためのモデル構築を進める必要がある.このモデル構築を進めるためには,磁気的性質を調査することと合わせて,23Kでの磁気転移における精密な構造解析実験,赤外反射分光実験などによる低エネルギー分光実験を行う必要がある.このような実験研究の結果を統合して,ランダムネスの高密度パイ電子共役状態への影響を解明する.また,対象物質の拡張として,モノマーモット絶縁体との対比としてダイマーモット絶縁体k-(BEDT-TTF)2Cu2(CN)3において提案されている量子スピン液体状態へのランダムネス導入効果を電子スピン共鳴により調査することを計画している.
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