研究領域 | 高密度共役の科学:電子共役概念の変革と電子物性をつなぐ |
研究課題/領域番号 |
23H04017
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金澤 直也 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (10734593)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | ヘテロ接合 / スキルミオン / ホプフィオン / Zak位相 / トポロジカルスピン構造 / 非線形伝導 |
研究開始時の研究の概要 |
2次元層状物質の剥離や積層によって多彩な物性の巧みな開拓・制御が可能になってきた。特に現在の激烈な研究競争の契機の1つとなったグラフェンのツイスト積層における強相関物性の発現は、まさにp電子のπ共役状態の精密な近接効果の制御に起因している。本研究では3次元d電子物質表面のπ結合状態に注目し、d電子系特有の磁性・強スピン軌道結合を利用した新しい2次元表面スピン物性を開拓する。具体的には、層状物質の積層制御と同様にd電子π結合表面状態への高密度近接効果に注目して、スキルミオンや創発磁気モノポール、さらには新たなトポロジカル磁気励起「ホプフィオン」の実現に挑みたい。
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研究実績の概要 |
本研究では固体表面に現れるd電子系の高密度共役電子状態の開拓とd電子系に特徴的な磁性との関連を明らかにすることを目的にしている。特に研究代表者が近年発見した非磁性絶縁体FeSiの表面に現れるトポロジカル強磁性金属状態を対象として、さまざまな異種物質との接合界面を作製し、界面におけるトポロジカル磁気構造形成を目指している。 本年度は、強いスピン軌道相互作用を有するPtとのヘテロ接合を作製した。Pt/FeSi界面において反対称的スピン軌道相互作用に起因して、トポロジカルスピン構造のスキルミオンの形成が観測された。これらのスキルミオンはサブミクロンスケールの大きさを有し、欠陥や表面荒さといった結晶構造の乱れによって強くピン留めされた状態であることがわかった。強いピン留め効果によって、従来のスキルミオンよりも6桁程度大きな電流密度によっても駆動・崩壊されない強固な状態となっている。これにより、高電流密度で顕著になる非線形伝導特性をスキルミオンの存在下で測定することができ、7次にまで及ぶ高次の非線形ホール効果を観測することに成功した。高次非線形ホール効果は電流による非線形磁化ダイナミクスや非共線スピン構造による電子散乱機構に起因していることがわかった。特に後者のメカニズムは、非線形トポロジカルホール効果とも言える新しい非線形伝導現象に対応する可能性がある。また、大きな非線形伝導特性はリザバーコンピューティングといった応用への展開も期待できる。 上記の成果は論文1件、解説記事1件として発表できている。さらにPt/FeSi界面以外にもさまざまな物質系を開拓しており、論文2件を出版している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究初年度に、目的としていたd電子高密度共役状態におけるトポロジカルスピン構造の形成や非線形伝導現象の発見をトポロジカル表面と重金属接合によって実現することができた。また研究成果を論文や解説記事として発表することができた。これらの成果も含め、日本物理学会若手奨励賞の受賞に繋がった。
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今後の研究の推進方策 |
Pt/FeSi界面におけるスキルミオン形成と高次非線形ホール効果の発見を基に、さまざまなヘテロ接合界面の作製とd電子高密度共役系におけるスピン状態の物理の構築に繋げていく。まずは、FeSiのトポロジカル強磁性表面状態に対してPt以外の接合物質を積層し、積層物質による近接効果の詳細を明らかにする。さらにホール効果以外にも非相反電気伝導(ダイオード効果、整流効果)といった非線形伝導現象を開拓していく。
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