研究領域 | 高密度共役の科学:電子共役概念の変革と電子物性をつなぐ |
研究課題/領域番号 |
23H04022
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 東京工業大学 (2024) 名古屋大学 (2023) |
研究代表者 |
山下 誠 東京工業大学, 理学院, 教授 (10376486)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | ホウ素 / ジボラン / 蛍光 / アジド |
研究開始時の研究の概要 |
一般にπ共役分子は炭素原子を中心とした骨格により構成されるが、もし酸素や窒素だけでπ共役系を構成できれば、小さな空間にπ電子が密集すると予想される。本研究では、応募者らが最近新たに発見した新奇骨格B2N6分子を基盤とした、高密度N6共役および分子内高密度共役を生み出すことを目的とする。具体的にはB2N6分子の窒素上の置換基変換を通した高密度N6共役系の拡張、B2N6分子のホウ素上の置換基による高密度N6共役系の光電子物性制御、B2N6分子のホウ素上へのπ共役分子導入による空間近接した高密度共役系の構築、を展開する。
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研究実績の概要 |
研究実施計画に従って以下の研究を行った。 (i) 窒素上の置換基変換を通した高密度N6共役系の拡張:既に合成していた、窒素上にトリメチルシリルメチル基を有するB2N6分子をフッ化テトラブチルアンモニウムで処理することで、トリメチルシリル基が脱離したメチル誘導体へと導くことができた。また、この分子を塩基およびアリールアルデヒドと反応させると、Peterson反応が進行して窒素原子上がアリールビニル基で置換された誘導体に帰属可能な生成物が得られ、これが元のトリメチルシリル誘導体に比べて長波長側に吸収を示すことを予備的に確認した。 (ii) ホウ素上の置換基による高密度N6共役系の光電子物性制御:既に合成していた、窒素上にベンジル基を有するB2N6分子をTfOHと処理することで、ホウ素上のo-トリル基がOTfに変換されたテトラトリフラート体へ誘導できること、さらにこれを塩化テトラブチルアンモニウムと反応させると、テトラクロロ体へ誘導できることを見いだしている。現在は得られた誘導体の還元反応やホウ素上への炭素置換基導入を検討している。 (iii) ホウ素上へのπ共役分子導入による空間近接した高密度共役系の構築:新しく合成したテトラ(1-ナフチル)ジボランをベンジルアジドと反応させることで、ホウ素上に1-ナフチル基が置換したB2N6分子を合成することができた。その吸収・発光スペクトルはホウ素上にo-トリル基が置換した誘導体のものと同様であることもわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(i) 窒素上の置換基変換を通した高密度N6共役系の拡張:研究計画に従って、窒素上のトリメチルシリル基のシリル置換基部位を脱保護することでメチル誘導体へと導くことができていること、さらにトリメチルシリル基の電子効果により隣接メチレン水素の酸性度が高くなっていることを利用してPeterson反応を適用することでπ拡張した分子を合成することができたこと、から、研究目的に従って順調に進捗していると判断している。 (ii) ホウ素上の置換基による高密度N6共役系の光電子物性制御:本研究にて主な研究対象としているB2N6分子のホウ素上が4配位ボラート構造になっていることを利用して、酸処理によりホウ素上のアリール基をOTf基に変換することができている。この官能基変換により、ホウ素上にさらに異なる置換基を導入できるようになったと考えられ、目的とするB2N6分子の光電子物性制御のための基盤作りができたと言える。さらに、脱離能の高いOTfを導入することで、B2N6骨格部位の還元反応も可能となるため、さらなる2電子還元による10π電子系分子の合成や、さらにその酸化/還元により開殻系分子への誘導も検討予定としている。このようにホウ素上の官能基変換により、当初想定していた以外の分子への誘導も視野に入れられる状況になった。 (iii) ホウ素上へのπ共役分子導入による空間近接した高密度共役系の構築:1-ナフチル基が置換したB2N6分子についてはX線結晶構造解析を行ってその構造を確定すると共に、DFT計算を行って、その吸収の帰属を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
(i) 窒素上の置換基変換を通した高密度N6共役系の拡張:ここまでに検討しているPeterson反応では片側のトリメチルシリル基が変換された誘導体が得られたのみであるが、これを両側のトリメチルシリル基に適用可能な反応条件を精査する。用いるアリールアルデヒドのパラ位に置換基を導入した誘導体も同様に合成、置換基が光電子物性に与える影響も系統的に明らかとする。また、より大きなπ共役系を持つアリール基を導入することも合わせて検討する。 (ii) ホウ素上の置換基による高密度N6共役系の光電子物性制御:OTf誘導体およびCl誘導体についてはサイクリックボルタンメトリーを用いて還元電位を明らかにすると共に、還元生成物の単離および構造解析を行うことを目指す。特に還元生成物のB2N6骨格全体が芳香族性を持つのか否か、還元により開殻電子系が生成したらその電子特性はどうなるのか、について着目して詳細な解析を行う。また、これらの誘導体に対して炭素求核剤を作用させることによる異なるアリール基の導入も検討し、その光学特性の変化についても明らかとする。 (iii) ホウ素上へのπ共役分子導入による空間近接した高密度共役系の構築:1-ナフチル基が置換したB2N6分子の吸収特性についてさらに詳細な解析を行う。溶媒効果に加えて圧力の効果に特に注目して解析する。ここでは溶液中で圧力の効果によりπ共役系置換基間での相互作用の強さが変わりうるかどうかをその吸収・発光特性から探る。
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