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超高圧下の高密度共役系の形成およびπ軌道精密計測

公募研究

研究領域高密度共役の科学:電子共役概念の変革と電子物性をつなぐ
研究課題/領域番号 23H04025
研究種目

学術変革領域研究(A)

配分区分補助金
審査区分 学術変革領域研究区分(Ⅱ)
研究機関静岡大学 (2024)
名古屋大学 (2023)

研究代表者

清水 康弘  静岡大学, 理学部, 教授 (00415184)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2024年度)
配分額 *注記
7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
キーワード磁気共鳴 / 機能性物質 / 超高圧 / 核磁気共鳴 / 光計測
研究開始時の研究の概要

本研究では、これまでに構築してきた超高圧下の精密な物性制御に関する技術を生かして、超高圧下で誘起される超高密度共役系の電子物性を開拓するとともに、NMRによって精密に分子軌道形状や環電流の局所分布を計測する研究課題に取り組む。高感度の光検出NMR法や高い空間分解能を有する磁気測定法を用いて、超低磁場下での軌道分解NMRおよびナノ磁気イメージングによる精密計測を実施することで、従来の精度を上回る分解能でπ共役系の局所構造に関する情報を得ることができ、光応答や電界効果トランジスタといった非平衡状態における電子状態の究明を可能にする。

研究実績の概要

本研究では、光検出NMRや磁気イメージング法と組み合わせた高感度かつ高分解能の光検出NMRシステムを構築することで、超高密度共役系の電子状態とダイナミクスを微視的に解明すること目的とし、新たに核スピン間のスカラー結合を利用したゼロ磁場核磁気共鳴計測システムをセットアップしてきた。検出系として超偏極Rb原子蒸気セルを用い、偏極した試料からのNMR信号をFaraday効果により高感度に計測した。今年度はまず、光検出NMRによって精密に分子軌道形状や環電流の局所分布を計測する研究課題に取り組んだ。高磁場下のNMR分光では摂動計算により分子構造を紐解くが、ゼロ磁場下では、スピン間の量子もつれを解析的に解くことで厳密な分子構造やコンフォメーションが得られる。そのため、市販の高磁場NMR測定では到底得られないような、長距離の核スピン間相互作用や環電流の局所分布などの詳細な情報を抽出することができる。
さらに、高密度共役系の分子間相互作用を自在に制御するためには、分子修飾による化学的アプローチと超高圧印可による物理的なアプローチが考えられるが、光検出システムを用いると従来よりも大幅に圧力制御範囲を拡大できる可能性がある。今年度は、パルスNMRにより核スピンをフリップさせたときの磁場変化を電子スピン共鳴信号の減衰として観測した。この手法により大幅に検出感度の向上が期待されると同時に、これまで困難であった低周波のNMRおよび核四重極共鳴測定が可能となると期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

超伝導磁石や検出コイルを必要としない持続可能なプローブへとNMRを進化させ、低磁場かつ微小試料の計測を実現するために、高感度の原子光学的な磁気プローブに注目し、NMRへの応用展開に取り組んできた。今年度は、新たにゼロ磁場磁気共鳴を行うための磁気センサなど設備をセットアップし、ナノテスラ以下の精度でゼロ磁場が実現していることを確認した。また、磁気センサの動作確認、および試料の磁場循環システムの構築を行った。現存する最高感度の磁気センサである超偏極アルカリ原子ガスを用いたポンプ-プローブ分光によって、ゼロ磁場および超弱磁場下で微小試料の高分解能13C NMR測定に成功した。通常のNMRスペクトルの分解能を上げるには高磁場を必要とするが、逆にゼロ磁場下でも存在する核スピン間のスカラー結合を精密に測定することで、厳密対角化計算との比較を可能にし、精密な物質同定が行えるようになった。
また、ナノスケールの空間分解能を有する磁気プローブを開拓するために、ダイアモンド中の窒素欠陥(NV)中心を用いた光検出磁気共鳴に関する研究を推進してきた。その性能を決めている量子コヒーレンス時間を定量的に評価するために、新たに光検出二重共鳴法を応用してNMRスペクトルを計測可能なシステムを構築した。

今後の研究の推進方策

常圧化で絶縁体である物質を金属化し、創発的な機能性発現を開拓するために、高密度共役系の超高圧下の物性を調べる。高圧発生装置として、ダイアモンドアンビル高圧セルを用い、物性測定方法として、光学伝導度およびNMRを用いる。従来の手法では、測定試料に直接NMR検出コイルをセットするため、狭い試料空間の100GPa級の超高圧実験は困難であったが、検出コイルを必要としない光検出型のNMR測定を行うことで、100GPa級の磁気測定を可能にする。今後は、より磁場感度を向上させるために、デコヒーレンスの要因となる13C核スピンを含まない高純度ダイアモンドを用いる。また、電子二重共鳴によって不純物窒素のスピン分極を消失させるなどの技術的な改良に取り組む。従来のNMR計測技術では100μg程度が検出限界であったが、光検出NMRにより最小検出感度を大幅に更新し、より高い分解能をもつNMR測定の実現が期待できる。検出が容易な有機溶媒などの液体試料の1H NMR測定からはじめ、最終的には領域内の研究グループとの共同研究を推進し、様々なπ共役分子の精密NMR計測を行う。その後、ダイアモンドアンビルセルにNV中心を埋め込むことで超高圧下のNMR計測を行う。また、分子間相互作用もしくは物性変化は、高圧下の物光学伝導度計測により評価する。

報告書

(1件)
  • 2023 実績報告書
  • 研究成果

    (9件)

すべて 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] ヘルムホルツ研究所(ドイツ)

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [雑誌論文] Nuclear Quadrupole Resonance in Kitaev Quantum Spin Liquid Candidate Ru1-xOsxCl32023

    • 著者名/発表者名
      T. Ohashi, Y. Shimizu, K. Kataoka, D. Hirai, Z. Hiroi
    • 雑誌名

      JPS Conf. Proc.

      巻: 38 ページ: 011131-011131

    • DOI

      10.7566/jpscp.38.011131

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] NMR Evidence for Majorana Gap in the Kitaev Quantum Spin Liquid2023

    • 著者名/発表者名
      Yamamoto Junya、Nagai Yuya、Jinno Takaaki、Shimizu Yasuhiro、Matsushita Taku、Kobayashi Yoshiaki、Itoh Masayuki、Nasu Joji、Motome Yukitoshi
    • 雑誌名

      JPS Conf. Proc.

      巻: 38 ページ: 011130-011130

    • DOI

      10.7566/jpscp.38.011130

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 分子性モット絶縁体のスピン相関制御2023

    • 著者名/発表者名
      清水康弘, 前里光彦
    • 雑誌名

      日本物理学会誌

      巻: 78 ページ: 22-22

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] フラストレート磁性体Ca3ReO5Cl2の35Cl-NMRにおけるコヒーレンス測定2023

    • 著者名/発表者名
      清水康弘, Diep Nguyen, 遠島未輝, 武田郁人, 松下琢, 小林義明, 平井大悟郎, 廣井善二
    • 学会等名
      日本物理学会2023年次大会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] 量子スピン液体候補κ-(ET)2Cu[Au(CN)2]Clにおける磁性不純物の影響2023

    • 著者名/発表者名
      田中優輝, 前里光彦, 留野慎也, 吉田幸大, 清水康弘, 北川宏
    • 学会等名
      日本物理学会2023年次大会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] 77Se NMRによる熱電半金属Ta2PdSe6のS置換効果の研究2023

    • 著者名/発表者名
      八木敦也, 小林義明, 中埜彰俊, 寺崎一郎, 清水康弘, 松下琢
    • 学会等名
      日本物理学会2023年次大会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] ノーダルライン半金属NaAlSiにおける27Al-NMR2023

    • 著者名/発表者名
      武井隼瀬, 土井華奈子, 武田晃, 山田高広, 廣井善二, 松下琢, 小林義明, 清水康弘
    • 学会等名
      日本物理学会2023年次大会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [備考] 固体磁気共鳴研究室(I研)

    • URL

      http://i-ken.phys.nagoya-u.ac.jp/index_j.html

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書

URL: 

公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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