研究領域 | 高密度共役の科学:電子共役概念の変革と電子物性をつなぐ |
研究課題/領域番号 |
23H04029
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
久木 一朗 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (90419466)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | 孤立電子対 / ヘテロパイ共役分子 / 分子集合 / ピラジノピラジン / 結晶工学 / 多孔質構造体 / 包接結晶 / 水素結合 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ヘテロパイ共役分子から多孔質分子集合体を構築し、その内部に孤立有電子対で内壁を覆われた空間「孤立電子対空間」を創出する。電子状態の異なる種々の分子を孤立電子対空間へ挿入して電子状態に摂動を加えることにより、高密度に集積した孤立電子対の重なりを経由した新たな高密度共役の発現と、その学理の構築を目標とする。
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研究実績の概要 |
本研究では、ヘテロパイ共役分子から多孔質分子集合体を構築し、その内部に孤立有電子対で内壁を覆われた空間「孤立電子対空間」を創出する。電子状態の異なる種々の分子を孤立電子対空間へ挿入して電子状態に摂動を加えることにより、高密度に集積した孤立電子対の重なりを経由した新たな高密度共役の発現と、その学理の構築を目標とする。具体的には4か所に孤立電子対をもつピラジノピラジンをモチーフにもつ一連の化合物を集積化し、分子結晶中で孤立電子対を経由した新たな高密度分子共役を発現させるとともに、多孔質結晶中に構築した孤立電子対空間への分子挿入による共役の変調を検討する。今年度は、まず、3つのピラジノピラジンが中心ベンゼン環に縮環したドデカアザトリナフチレン誘導体の合成を検討した。これまで鍵となる最終段階の反応で生成した混合物の同定ができておらずまたその再現性も確認できていなかったが、この混合物をさらに化学酸化することによって目的のドデカアザトリナフチレン誘導体が生成することを確かめた。さらに、これまでに偶発的に得られている結晶構造と今回得た結晶構造とに明確な差異があったことから、以前の構造は、目的化合物と反応中間体が混合した結晶であることが示唆された。さらに、2つおよび3つのピラジノピラジンを、単結合を介してベンゼン環に導入した柔軟な配座を有する集積分子を合成し結晶化を行った。その結果これらの集積分子は、ピラジノピラジンのイミン性窒素原子の周辺に孤立空間を有する構造の結晶を与えることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数のピラジノピラジン部位を有する分子の合成について完了した。そのうちの一つについては特に結晶中での分子集合構造の様式が特徴的であり、この構造に由来した光物性が発現しそうである。また、懸案事項であったドデカアザトリナフチレン合成における縮合反応の再現性について、今年度内に解決した。分子の合成経路の確立および一部の分子についてはその結晶構造を明らかにし、孤立電子対が豊富な包接空間が結晶中に形成されていることも見出しつつある。よって、計画通りおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、標的分子の合成を進めるとともに、得られた多孔質結晶をX線構造解析によりその構造を明らかにする。単結晶が小さい、結晶格子が大きい、あるいは、細孔内に包接された溶媒分子のディスオーダーによって解析するために必要な高角側の回折X線強度が十分に得られない場合は、放射光実験施設に課題申請を行い、高輝度の放射光X線を用いて構造解析を行う。集積体の熱物性評価は、熱重量分析、示差走査熱量分析により行う。構造体の電子状態は、観測された結晶構造を基に計算化学的な手法により求める。
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