研究領域 | 高密度共役の科学:電子共役概念の変革と電子物性をつなぐ |
研究課題/領域番号 |
23H04034
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
灰野 岳晴 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 教授 (80253053)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | ナノグラフェン / 超分子化学 / 自己集合 / 化学修飾 / CD |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題は,トップダウンにより調製されるナノグラフェンを集積化し,新しい電子共役システムを開発することで生み出される革新的機能を創発する。合成化学的および超分子化学的手法を用いてナノグラフェンを集積化し,ヘテロ原子をドープしたグラフェン薄膜や超分子ナノグラフェンポリマーを合成し,新しい電子共役システムを開発する。また,電子スピン共鳴により新たに合成したグラフェンの有効共役サイズを決定し,真の電子共役構造を明らかにする。また,グラフェン材料の開発により高密度な電子共役システムを提供することで,領域内共同研究を推進し,機能創発を行うことで本領域に貢献する。
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研究実績の概要 |
2023年度は,ピレン基とm-ターフェニル基をキラルな置換基としてエッジに導入することにより、グラフェンの面をキラルにねじることに成功した。CDシグナルから、同じキラル配置にもかかわらず、ピレン基とm-ターフェニル基によって正反対のキラリティが誘起されていることから,エッジで起こる置換基間の立体相互作用がキラリティーの誘起に大きく関わっていることが明らかになった。エッジ上の置換基間の立体相互作用を利用することは、高度なキロプティカル特性を持つNGsを実現するための戦略になる。 青色発光と赤色発光を示す有機置換基をナノグラフェンに一括導入することで紫色発光の再現を目指した。その結果、360nmの光で化学修飾したナノグラフェンを励起したところ、青色発光と赤色発光が同時に起こり、中間色である紫色発光を再現することができた。さらに、ナノグラフェンに導入した青色発光と赤色発光の発光強度が励起光の波長と有機溶媒の種類に依存することを利用し、励起波長を変化させることで様々な色での発光を実現した。興味深いことに、ナノグラフェンが凝集することで発光強度が増強するという凝集誘起発光増幅が起こることを突き止めた。この性質を利用することで、凝集状態でも発光性能の低下を抑えられることが期待される。実際に、ナノグラフェンをポリマー樹脂であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)に分散させたところ、発光性能の低下を抑えつつ紫色に発光するフィルムの実現に成功した。この特徴は、NG-有機ハイブリッド材料の利点である。これらの研究成果は既に学術論文として発表済みである。また,学会等でも既に発表を終えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では,グラフェンの化学的及び超分子化学的手法による新しい集積化の方法の開発と,これによる新しい電子共役構造の構築を目指している。当初の計画通り,ナノグラフェンの電子状態を精密に制御することで中間色発光の創出に成功した。また,エッジ修飾によりグラフェンの内部のπ共役平面をねじることに成功したことは,今後キラルな高密度π共役の創製に大きな道を開くと期待される。本研究課題が目指すグラフェンの積層構造を基盤とした新しい電子共役構造の創製に向けて順調に進んでいる。グラフェンの化学修飾により,新しい中間色発光システムを構築できたことは特筆に値する。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,ヘテロ原子が共役構造に化学的にドープされたグラフェン薄膜や,ナノグラフェンの自己集合によるキラルな超分子ポリマーを開発することで,グラフェンの新たな電子共役構造の創出を行う。具体的には,キラルなナノグラフェンを核として超分子化学的に集積させる手法を開発することで,超分子キラルらせん高密度共役を構築できる。さらに,芳香族ジアミンと官能基化グラフェンの反応により新しいグラフェンポリマーを合成し,電子機能を明らかにすることで,新しい電子デバイスの開発を目指す。グラフェン超分子ポリマーやポリマーを原子間力顕微鏡により観測することで構造を明らかにする。さらに,電子構造を電子スピン共鳴法によりグラフェンの電子共役構造を検討する。
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