研究領域 | マテリアルシンバイオシスための生命物理化学 |
研究課題/領域番号 |
23H04055
|
研究種目 |
学術変革領域研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
幸福 裕 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (80737940)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
|
キーワード | 核磁気共鳴法 / 相互作用 / 膜タンパク質 / シグナル伝達 / Gタンパク質共役型受容体 |
研究開始時の研究の概要 |
免疫応答は、リガンドと受容体間のダイナミックで弱い相互作用を起点とし、多段階、多点での相互作用を伴いながら開始される。申請者らは、核磁気共鳴 (NMR) 法を用いて、受容体とリガンドの弱い相互作用を原子レベルで明らかにする研究、受容体のダイナミックな構造変化が細胞応答の強さなどを決定するメカニズムを明らかにする研究を推進してきた。本研究ではこれら2つの実績を統合的に活かすことで、リガンドが受容体に弱く多点で相互作用し、その結果、受容体のダイナミックな構造変化を介して、どのように細胞応答を引き起こすか、を解明する。
|
研究実績の概要 |
1.ケモカイン受容体のNMR解析条件の確立 Gタンパク質共役型受容体(GPCR)の一種であるケモカイン受容体の核磁気共鳴(NMR)法による解析を進めた。昆虫細胞発現系を用いて、メチオニンメチル基を選択的に標識したケモカイン受容体を調製し、NMRスペクトルを測定した。ケモカイン受容体の細胞外領域および膜貫通領域には、内在性のメチオニン残基が少なく、その構造変化を詳細に解析することは困難であった。そこで、ケモカイン受容体の様々な部位に、変異によりメチオニン残基を導入した。これらの変異体についてNMR解析をおこなったたところ、多くのメチオニン残基について、その化学シフトがリガンド依存的に変化することがわかった。これにより、ケモカイン受容体の構造を詳細に解析するためのNMR解析条件が確立できたと判断した。 2.哺乳細胞発現系における安定同位体標識条件の確立 これまでに、昆虫細胞発現系を用いて、安定同位体標識を導入したケモカイン受容体を調製することに成功している。一方で、昆虫細胞発現系では、ケモカイン受容体の発現量が低いことが課題となっている。そこで、哺乳細胞発現系を用いた安定同位体標識条件を確立することとした。ケモカイン受容体について、昆虫細胞と哺乳細胞で発現量を比較した結果、哺乳細胞の方が発現量が多いことがわかった。モデルタンパク質としてチオレドキシンを用い、哺乳細胞発現系における安定同位体標識率を算出した結果、昆虫細胞発現系と同程度に高い標識率が達成できる条件を見出した。GPCRの一種であるβ2アドレナリン受容体について、哺乳細胞発現系を用いて安定同位体標識試料を調製し、NMR解析をおこなったところ、高い測定感度でNMRシグナルを検出することができた。以上により、ケモカイン受容体のNMR解析にも適用可能な、哺乳細胞発現系における安定同位体標識条件が確立できたと判断した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はケモカイン受容体のNMR解析を進めることとしていた。現時点で、多くのメチオニン残基をプローブとして確立することに成功するなど、当初の計画にそった結果がえられている。昆虫細胞発現系におけるケモカイン受容体の収量が少ないことが課題であったが、より高い収量が期待できる哺乳細胞発現系における安定同位体標識法の確立にも成功した。以上のことを考え合わせて、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
来年度は当初の予定通り、ケモカイン受容体に、シグナル伝達プロファイルが異なる様々なリガンドが結合した状態のNMR解析を進めることで、これらのリガンドの相互作用により、なぜシグナル伝達活性の違いが生じるかを解明する。本年度は、昆虫細胞発現系により調製したケモカイン受容体を用いてNMR解析をおこなった。一方で、より高い発現量が期待できる哺乳細胞発現系での安定同位体標識も確立できたことから、来年度はこれを利用することで、より効率的にNMR解析を進める予定である。
|