研究領域 | マテリアルシンバイオシスための生命物理化学 |
研究課題/領域番号 |
23H04070
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
深井 周也 京都大学, 理学研究科, 教授 (10361792)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | 分子間相互作用 / 膜受容体 / シナプス / 構造生物学 / 足場タンパク質 / X線結晶構造解析 / 神経発達障害 |
研究開始時の研究の概要 |
脳を構成する神経細胞は,シナプスと呼ばれる接着構造を介してつながって回路を形成する.SynCAMタンパク質群は接着構造を構成する分子であり,シナプスの形成や維持などの重要な役割を担う.SynCAMは,細胞の外側で別のSynCAMと相互作用すると同時に,細胞の内側で足場タンパク質と呼ばれるMAGUKタンパク質群と相互作用する.本研究では, SynCAM群とMAGUKタンパク質群との相互作用の様式を解析することで,シナプスの形成・維持に重要な分子機構の一端を明らかにする.
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研究実績の概要 |
神経細胞は,信号伝達を担う細胞接着構造であるシナプスを介してつながって回路を形成する.シナプス膜には多様な膜受容体様細胞接着分子(Synaptic Cell Adhesion Molecule; Synaptic CAM)が存在し,シナプスの形成や維持などの重要な役割を担う.Synaptic CAMは,細胞外でシナプスを跨いで別のSynaptic CAMと相互作用すると同時に,細胞内で足場タンパク質であるMembrane-Associated Guanylate Kinases (MAGUK)ファミリーと相互作用するが,この相互作用は,配列特異性と親和性の低さ,結合可能性のある複数のドメインの存在によって,結合選択性が明確ではなく,どの組合せでどのように相互作用するかといった分子機構に未だ明確な答えが得られていない.本研究では, Synaptic CAMの細胞内領域とMAGUKタンパク質との相互作用を細胞内で可視化・定量化する技術を確立し,「多様な組合せが考えられる分子間相互作用の中から適切な組合せが選択される分子機構」を網羅的な変異体解析によって理解する.生きた細胞内で分子間相互作用を可視化するFluoppi法を利用して,複雑な相互作用を解析し,特異性や結合能を評価する.新たに見出される分子機構は,物理化学的手法を利用した分子間相互作用測定によって検証し,X線結晶構造解析などの立体構造解析によって,原子レベルで理解する.これらの研究によって,当該研究領域における「弱い分子間相互作用のイメージングと定量的測定手法の開発」に貢献する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,生きた細胞内で分子間相互作用を可視化するFluoppi法を利用して,複雑な相互作用を解析し,特異性や結合能を評価する.シナプス後部に発現する20種類のSynaptic CAM群(IL-1RAcPの二つのアイソフォーム,IL1RAPL1,NLGN1,NLGN3,LRRTM1-LRRTM4,SALM1-SALM5,Slitrk1-Slitrk6)とSynaptic CAMと同様にシナプス間隙を跨いで相互作用するADAM22の21種類のタンパク質を解析の対象とし,PSD-95およびPSD-93,SAP102の三種類のMAGUKタンパク質との相互作用を並行して解析して比較する.これまでに,PSD-95(全長およびドメイン単位の欠失変異体)に加えて,PSD-93とSAP102の解析も終えたが,基本的にPSD-95とPSD-93やSAP102との明確な違いは見られなかった.次に,Fluoppi法で検出するシグナルと実際の結合親和性との相関を解析するために,化学合成したSynaptic CAM群のC末端ペプチドとPSD-95(全長とドメイン単位の欠失変異体)との相互作用を等温滴定型カロリメトリー(isothermal titration calorimetry; ITC)で解析することを開始した.LRRTM1の測定を行うことで測定条件を検討した.PSD-95の三番目のPDZ結合ドメインとリガンドとの複合体の結晶構造が複数報告されているが,二番目のPDZ結合ドメイン(PDZ2)との複合体の立体構造は一例のみである.本研究での解析でLRRTM1との相互作用が検出されており,立体構造決定を目指して,LRRTM1のC末端ペプチドとPSD-95のPDZ2との複合体の結晶化スクリーニングを行い,回折測定に十分な大きさの結晶を得ている.
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今後の研究の推進方策 |
NLGN1,LRRTM1,NMDAR2BとPSD-95のC末端ペプチドとPSD-95との相互作用をITCで測定し,Fluoppi法で検出するシグナルと結合親和性との相関を解析する. また,Fluoppi法で検出するシグナルの定量化にあたって,蛍光画像の撮影方法や解析方法などの改善を進める.LRRTM1のC末端ペプチドとPSD-95のPDZ2との複合体の結晶構造解析を進める.大型放射光施設SPring-8で高分解能の回折データセットを収集して立体構造を決定した後に,変異体を用いた相互作用解析やシナプス誘導アッセイによって予想される分子機構の裏付けを行う.
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