研究領域 | 超秩序構造が創造する物性科学 |
研究課題/領域番号 |
23H04094
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
北浦 守 山形大学, 理学部, 教授 (60300571)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | 超秩序構造科学 / 不純物空孔対 / 局所構造解析 / 陽電子消滅分光 / 電子分光 / クロム化合物 / DFT計算 / 原子分解能ホログラフィー / 超秩序構造 / 酸化クロムエピタキシャル膜 / 光電子ホログラフィー / 陽電子消滅寿命分光 |
研究開始時の研究の概要 |
非平衡状態で作製される岩塩型酸窒化クロムエピタキシャル膜は耐摩耗性や摺動性を兼ね揃えた硬質膜である。酸素ドープで生ずる高硬度化には、コランダム構造が積層欠陥として岩塩構造中に析出し形成されたナノラメラ構造が密接に関わると考えられているが、ナノラメラ構造の形成に至る物理的機構は未解明のままである。この問題を解き明かす鍵は電荷補償機構にあり、ドーパントの酸素とその補償体であるクロム空孔がナノラメラ構造中にどのように分布するかを知ることが最重要課題である。ミクロな超秩序構造(ドーパントと原子空孔)とマクロな超秩序構造(ナノラメラ構造)が織りなす階層性が高硬度化とどのように関わるか、その核心に迫る。
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研究実績の概要 |
酸化マグネシウム基板上にエピタキシャル成長させた酸窒化クロム膜は岩塩構造をとり、部分的にコランダム構造が積層欠陥として導入される。その結果、酸窒化クロム膜の硬度は硬質膜として実用化されている窒化クロムよりも高くなる。これはいわゆるラメラ構造が形成されるためと考えられている。ラメラ構造の形成と膜の高硬度化には酸素ドープが重要な役割を果たすと考えられるが、酸素が果たす役割は全くの手付かずであった。そこで、まず微量な酸素の局所構造を解き明かすために、光電子ホログラフィーの実験をSPring8のBL25Suで行なった。4%酸素ドープした窒化クロム膜における窒素と酸素の1s光電子ホログラムを室温で測定した結果、2つのホログラムは互いにほぼ一致しており、窒化クロム膜にドープされた酸素は窒素位置を占めることを明らかにした。
酸素が窒素サイトを占める場合には電荷補償が必要であり、補償体として原子空孔が導入されると考えられる。窒素と酸素の価数を考慮するとクロム単空孔が導入されると予想される。そこで、酸素ドープによって窒化クロム膜にクロム単空孔が導入されるかどうかかを明らかにするために、産総研において陽電子ビームを用いて陽電子消滅寿命分光を行い、その結果を密度汎函数理論(DFT)に基づく第一原理計算によって解析した。欠陥モデルとしてクロム単空孔以外に窒素サイトの酸素と窒素空孔を考慮した。相対強度の約9割を超える主成分の陽電子消滅寿命は約164 psであり、DFT計算で決定したクロム単空孔での陽電子消滅寿命(=174 ps)と近い。この事実は酸素ドープした窒化クロム膜にはクロム単空孔が含まれることを示しており、酸素ドープが及ぼす影響を探る上で極めて有用な知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた実験はほぼおえることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
クロム単空孔近傍に酸素が存在して複合欠陥対を形成するかどうかを明らかにするために、光電子ホログラフィーのホログラム解析と像再生解析を行っている。また、陽電子消滅同時係数ドップラー広がり(CDB)法の測定を行って、その解析に取り組みはじめた。解析の進展とともに、追加の実験を要するかもしれないので、その場合には再度実験を行いたい。
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