研究領域 | 超秩序構造が創造する物性科学 |
研究課題/領域番号 |
23H04096
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
大窪 貴洋 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (50534541)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
10,920千円 (直接経費: 8,400千円、間接経費: 2,520千円)
2024年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
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キーワード | NMR / 欠陥 / 表面 / 機械学習 / ゼオライト / 非晶質材料 / 固体NMR / 置換 / 第一原理計算 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、無機材料を構成する多核の固体NMRデータを機械学習で解釈し、観測したNMRデータから、原子の三次元構造を推定する新しい解析法の研究である。これまでに、場当たり的な構造モデルを仮定した第一原理計算で、観測したNMRデータを解釈する試みが行われてきた。この方法は、解析者の知見に基づいた構造モデルが必要であり、汎用的な手法ではない。本研究では、第一原理計算で構造-NMRデータを大量に生成し、これを学習データとしてNMRパラメータを予測する機械学習モデルを構築する。次に、構築した機械学習モデルを組み込んだ逆解析を実装し、NMRデータから原子座標を推定するデータフローを確立する。
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研究実績の概要 |
スチームや酸処理により欠陥の生成を修復を行ったゼオライト中のAlを対象に構造-27Al NMRパラメータのデータを構築した。実験的に得られたNMRパラメータを解釈するために、欠陥サイトとAl置換サイトの組み合わせ全パターン(154モデル)の第一原理計算を行い構造最適化を行った。最適化計算で得られた構造について、GIPAW計算を行い、局所構造-NMRパラメータのデータセットを構築した。ゼオライト中のAl置換サイト、欠陥サイトからのAlへの距離をパラメータとして、データを整理した。GIPAW計算と実験データを比較することで、各化学処理で引き起こされるゼオライト中のAl構造変化について評価した。 加えて418個の原子を含む第一原理分子動力学(AIMD)シミュレーションを用いて、Al2O3-SiO2の正確な原子構造をモデル化した。Alに結合したOが形成する多面体の構造は、球面調和関数を用いて結合角分布と対称性を評価することにより定量的に解析した。また、AIMDから得られた電子構造の解析を通して、化学シフトと電荷平衡機構の関係を調べた。その結果、Alの部分電荷とAl-O結合の空間的な電子分布はAlの配位数に依存せず、価電子は特定の原子に局在しているのではなく、むしろガラスネットワーク全体に分布していることが示唆された。NMRパラメータの理論分布は、100個のAIMD由来の構造について理論計算されたNMRパラメータから統計解析によって評価された。実験的なNMRデータを理論から得られた分布と比較することで、これまで不明であった27Al NMRパラメータと局所構造の関係を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
固体NMR実験と欠陥-置換サイトを網羅的にモデル化した構造を作成し、第一原理計算に基づくNMRパラメータの理論計算により、ゼオライト中に存在するこれまでに報告されていないAl置換サイトを提案することができた。また、Alの局所構造を球面調和関数で表現してNMRパラメータと関係することを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
より複雑な配位構造をもつガラスについても解析をすすめ、ガラスを構成する局所構造の解析を進呈させる。また、溶融がら固化の過程でガラスの配位構造を形成するプロセスについても解析をすすめる。
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