研究領域 | 超秩序構造が創造する物性科学 |
研究課題/領域番号 |
23H04105
|
研究種目 |
学術変革領域研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
旭 良司 名古屋大学, 未来社会創造機構, 教授 (80394625)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
11,050千円 (直接経費: 8,500千円、間接経費: 2,550千円)
2024年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
|
キーワード | 誘電体材料 / 複合欠陥 / 第一原理計算 / 材料探索 / 機械学習 / ドーピング / グラフネットワーク |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、同時ドープされた金属酸化物材料において、局所構造の歪による金属-酸素結合の部分的不安定化が巨大誘電率の本質的な発現機構であることを理論的および実験的に検証し、その原理を種々の金属酸化物と各種同時ドープの組み合わせに適用することにより、巨大誘電率を有する新規誘電体材料の探索・提案をする。さらに、局在構造と誘電特性をデータベース化し、機械学習による誘電率予測モデルと機械学習ポテンシャルを活用し、誘電率の温度依存性、安定性、圧力依存性を評価する。また、巨大誘電率の発現機構の解明を実験と理論の連携によって行い、超秩序構造に基づく機能発現の学理構築に貢献する。
|
研究実績の概要 |
本研究では、複合欠陥を含む誘電体材料に着目し、その局所的な特異構造と誘電特性の相関を系統的な計算によって理解し、データベース化することにより、新規誘電体材料を発見するための手法を構築する。公募研究第一期では、誘電率発現につながる局所構造を見出すことができた。第二期では、これらの成果を基盤に、大規模系への拡張と新規な巨大誘電体材料の実現に向けた取り組みを行っている。 グラフネットワーク(GNN)予測モデルは、大規模かつ複雑な材料系での誘電率を予測する有効な手段であると考えられる。実際、複合ドーピングした酸化物の第一原理計算データベースを用いて訓練されたGNNモデルは、ランダムフォーレストより高い予測精度を示した。特に、小規模系のデータで訓練されたGNNモデルは大規模セルにおいても比較的良好な予測精度を示すことが分かった。このGNNモデルを用いて、(Nb,In)同時ドーピングTi酸化物に対して、大きな誘電率を示す「局所サイト」がTi-O結合長のソフト化に起因していることが示された。これらの結果は、GNNモデルがドーピングによって変調された局所構造の特徴を捉えていることを示す。また、GNNモデルを誘電率テンソルに拡張するために、SchNetモデルをベースに回転等価性を満たすモデルを新規に開発し,ボルン有効電荷テンソルを高精度に予測できることを確認した。 温度やドーピング濃度の依存性を計算するために、モンテカルロサンプリングとGNNモデルを組み合わせたアルゴリズムを開発した。そのために必要な光学フォノン、エネルギー、誘電率の3つの物性を予測するGNNモデルを新規に生成した。本アルゴリズムによって、ドーピング濃度の増加に従って誘電率の増大する傾向が示された。これはドーピングによる局所構造の歪が起因する結合のソフト化が、濃度の増大によってより顕著になることを示している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、巨大誘電率の発現機構を検証し、その原理を種々の金属酸化物と各種同時ドープの組み合わせに適用することにより、新規誘電体材料の探索・提案をすることである。現在までの研究により、局所構造の特徴、金属ー酸素結合の不安定化から巨大誘電率の発現を計算によって検証できた。また、第一原理計算のデータベースを構築し、大規模系に拡張可能なグラフニューラルネットワークモデルを新規に開発できた。さらにモンテカルロサンプリングと組み合わせたシミュレーションによって、大規模系のドーピング濃度依存性、温度依存性を評価することができた。これらの手法構築は、今後の新規材料探索に適用可能である。以上の研究実施内容により、本研究課題の進捗として、順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに、第一原理計算によって最適化した様々な構造に対する誘電率をデータベース化し、その統計的モンテカルロサンプリングによって、有限温度まで拡張した。しかしながら、この手法では、有限温度での構造揺らぎや相転移に伴う誘電率を考慮することができない。これを解決するために、電場下の分子動力学シミュレーション中に、グラフニューラルネットワークによって、大規模系に対して、ボルン有効電荷と誘電率を計算する手法を新たに構築する。これを用い、高温でも大きな誘電率が発現する材料提案と、実験での実現を目指す。
|