研究領域 | 超秩序構造が創造する物性科学 |
研究課題/領域番号 |
23H04110
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
菅 大介 京都大学, 化学研究所, 准教授 (40378881)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
11,050千円 (直接経費: 8,500千円、間接経費: 2,550千円)
2024年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
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キーワード | 水素超秩序構造 / 酸化物 / 水素脱挿入 / 水素蓄積 / 水素注入 / 水素 / 超秩序構造 / 薄膜 / 局所構造 |
研究開始時の研究の概要 |
セラミクスがもつ水素機能の起源となる「水素超秩序構造」の観測・解明や制御は、水素機能の開発さらには将来の水素社会の実現にむけて取り組むべき喫緊の課題である。他方、水素の観測はその散乱因子の小ささ故未だチャレンジングであり、セラミクス中の「水素超秩序構造」の原子レベルでの描像はいまだ得られていない。本課題では、応募者らが独自に発見した、水素吸蔵酸化物エピタキシャル薄膜に対して、本学術変革領域が有する蛍光X線や光電子ホログラフィー技術をベースにした高度構造解析を適用し、水素が作り出す超秩序構造を原子レベルで同定・解明する。
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研究実績の概要 |
応募者がこれまで見出してきた水素吸蔵酸化物エピタキシャル薄膜における水素超秩序構造」に取り組んできた。領域内の計算グループと連携して、酸素欠損型ペロブスカイト酸化物中における酸素欠損の秩序配列の形成とそれによって結晶格子中への水素吸蔵が促進されることは、酸素量変化および水素蓄積による還元反応のエネルギー変化に着目することで理解できることを見出した。この知見は、酸化物における酸素蓄積過程を統一的に理解するための手掛かりになる成果である。また、プロトン導電性の固体電解質をゲート層とした電界効果トランジスタ構造において、酸化物薄膜中への電気化学的なプロトン注入によって生じる水素蓄積プロセスに検討したところ、固体電解質と酸化物薄膜との界面において蓄積されるプロトンが酸化物中に蓄積される水素量を決定する重要な要因であることを見出した。また電圧印加シーケンスを工夫し、界面に蓄積した水素量を適切に調整した場合においてのみ、効率よく水素蓄積が可能であることを見出した。また、光電子フォログラフィーを活用した酸化物中の「水素超秩序構造」の可視化にも取り組んでいる。水素蓄積した酸化物薄膜から、フォログラフィーパターンの観測に成功した、水素注入前後においてフォログラフィーパターンが変化すること確認した。また観測されたフォログラフィーパターンを再現するために、結晶格子中に蓄積された水素まで含めた構造モデルの構築に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験データと理論計算結果とを融合させることで、酸化物中の水素蓄積プロセスを、統一的に理解するために知見が得られつつある。また、電気化学的な水素注入による水素蓄積量を最大化するための手法も確立でき、そのメカニズムも理解できつつある。また、水素蓄積した酸化物薄膜からフォログラフィー像の取得にも成功しており、「水素超秩序構造」を解明に近づきつつある。
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今後の研究の推進方策 |
本年度得られた知見を基に、水素吸蔵酸化物の開発や「水素超秩序構造」の解明に取り組む。電気化学的な水素注入による水素蓄積量を最大化するための手法を活用して、大量の水素を蓄積可能なセラミクス材料を開発する。実際に、酸素欠損の規則配列を有する酸化物に対して、その秩序構造を維持できる範囲で化学置換を施すと水素蓄積量が増加することを見出している。理論家とも連携しながら、水素吸蔵メカニズムや酸化物中の「水素超秩序構造」の解明に取り組む。
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